研究課題/領域番号 |
21K13514
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松田 充 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (80845991)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 授業の記録、分析、解釈 / 授業実践 / ドイツ教授学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、授業実践の研究を記録、分析、解釈という三つの段階に区分し、ドイツの授業研究と対照しながら、それぞれの方法について検討することで、授業研究の研究方法論を明らかにすることである。 ドイツにおける授業研究では様々な質的な研究方法論が用いられる。それぞれの方法論の差異は、分析方法にだけではなく、その分析を支える記録にも表れる。そこで研究初年度となる2021年度は主に授業記録のあり方について、N.Rickenの談話分析に着目した授業研究と、A.Baltruschatの教授学的授業研究について検討を行った。 Rickenによる談話分析を用いた授業研究では、授業記録の作成方法に詳細なルールが定められており、誰が作成しても同じ記録となることが目指さされていた。対して、Baltruschatの教授学的授業研究では、むしろBaltruschat自身の教授学研究を反映させながら、ビデオ記録のズーム機能や、発話記録の中での教室の雰囲気の記述などが行われ、自身にしか作成されえない記録が作成されている。これは、Baltruschatが特定の授業研究の研究方法論を用いるのではなく、「教授学的な解釈」を行うことを授業研究の主眼に置いているからである。 日本の授業研究に比して、授業研究の科学性や実証性を重視するドイツの授業研究では、授業記録の作成、その分析と解釈、それぞれの方法が精緻化されており、独立性が高いことを想定していた。明示的な方法論を用いるRickenとそれを行わないBaltruschat、それぞの授業研究の比較分析から、授業実践の研究を記録、分析、解釈という三つの段階に区分することが可能である場合とそうではない場合があることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
質的な研究方法論の検討を起点にして、授業研究の記録、分析、解釈のそれぞれについて検討を行っており、順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方向性としては、1.授業研究の記録、分析、解釈それぞれの段階の関連性と独立性について検討を行うこと、2.授業研究に限定するのではなく、教育実践の記録と分析のあり方について研究を進めていくことを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
文献購入とドイツへの渡航のための予見を計上していたが、すでに所有していた文献で研究を行うことができ、またドイツへの渡航が中四になったため。次年度において、追加での文献の購入とドイツへの渡航を行う予定である。
|