研究課題/領域番号 |
21K13519
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研究機関 | 拓殖大学北海道短期大学 |
研究代表者 |
横関 理恵 拓殖大学北海道短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (30847942)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 公教育制度 / 教育行政学 / 補償教育 / 夜間中学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、本科研の1年目である。本研究では、戦後の夜間中学の歴史を第1期1947年~1954年(学齢児、日本人)、第2期1955~1969年(学齢超過者、日本人、在日韓国朝鮮人)、第3期1970年~1998年(学齢超過者、引揚者、日本人、不登校経験者)、第4期1999年以降(学齢超過者、新渡日外国人)と4つの時期に区分しており、生徒層が学齢児から学齢超過者へと移行する第1期から第3期までを着目している。これらを踏まえ今年度は以下の2点について集中的に取り組んだ。 (1)第1期について、1950年代の横浜市の夜間中学の開設過程について歴史的に明らかにすることを試みた。特に、横浜市にある漁村地域では、学齢児の長欠・不就学対策として どのような手立てを講じようとしたのか。公立の夜間中学を義務教育制度へどのような方策によって位置づけたのか。その運営や教育内容はいかなるものだったのか。このような取り組みの中で夜間中学を成立させていた教育ガバナンスを自治体、漁業組合、小・中学校、地域住民がいかに機能させていたのかについて検討をし、論文にまとめ発表することができた。 (2)第2期から第3期にかけての大阪の夜間中学の開設過程について明らかにすることを試みた。戦後、夥しい数に上る学齢児の長欠・不就学の学齢児童生徒数は、就学援助政策の導入によって次第に減少する中、1960年代末頃より、学齢超過の日本人、日本人以外の多様な属性の人々が夜間中学で学ぶようになる。国・地方自治体は、当時、いかなる学齢超過者の補償教育政策を構想し、実行に移したのか、また、しなかったのか。それに対して夜間中学関係者の市民運動組織はどのように反応したのかに着目して、1960年代末の大阪での夜間中学の開設過程を検討した。論文にまとめ発表するまでには至らなかったので、引き続き、次年度も継続して取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、第1期~第3期を対象として、横浜市(第1期)、大阪市(第2期~第3期)を対象として、義務教育制度内における学齢児、学齢超過者への補償教育を担う学校としての夜間中学の開設について歴史的観点から検討することができた。資料調査では、神奈川県立図書館リファレンス担当者に横浜市立教育委員会関係資料、横浜市浦島丘中学校関係資料をご教示いただいた。また、横浜市子安浜漁業組合にゆかりのあるジャパントータルサービス株式会社(旧東西興行株式会社)には、社史をご提供をいただき、横浜市の漁村においての夜間中学の開設に関わる歴史的経緯やその運営について検証することができ、論文にまとめ発表することができた。大阪市の夜間中学の開設については、大阪市立図書館、大阪府立中之島図書館に所蔵されている1960年代末の「毎日新聞」「読売新聞」の調査をリファレンス担当者の協力を得て行い、大阪の夜間中学に関わる文献調査を行うことができた。コロナ禍のため、横浜市、大阪市への現地調査はかなわなかったが、次年度に改めて、現地調査を行う計画をしている。
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今後の研究の推進方策 |
子どもの教育を受ける権利を保障する戦後の義務教育制度が学齢児の長欠・不就学を生み出し、その結果、後に学齢超過者の義務教育未修了者の問題を引き起こすことになった。本研究の課題は、これらの人々への基礎教育保障が適切に行われなかった理由について、歴史的及び実証的に解明し、その上で公教育システムにおける補償教育制度の在り方を教育ガバナンスの観点から探求することである。2022年度も引き続き、第1期~第3期までを対象とし、公立夜間中学、自主夜間中学を対象とし、主に、東京、大阪、京都を対象として夜間中学の成立過程やその背景を明らかにするために、現地調査、もしくはオンライン調査を実施し研究を進める。また、公教育制度の根幹をなす義務教育制度法制度の検討を行うために、日弁連資料、全国夜間中学校研究会大会資料等の資料を用いて教育機会確保法の成立過程について検証を行い、研究を進めていく。 なお、新型コロナウィルスの感染により、現地調査が困難となった場合、翌年度に調査を繰越すか、オンライン調査、文献調査など、訪問調査を実施しなくても可能な研究方法へと変更する等を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、当初予定していた大阪、京都、東京などへの現地調査ができなかったため、旅費、それに伴う物品(カメラ、スキャナー)、及び、資料郵送費等を使用することができなかった。そのため、翌年度は、コロナ禍の緩和が見込まれた際には、現地調査の旅費、資料保存に必要な物品などを購入する予定である。また、インタビュー調査の音声データをテープ起こしなどをするための費用にも活用する予定である。
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