研究課題/領域番号 |
21K13520
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
高野 貴大 茨城大学, 教育学部, 助教 (40881529)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 省察 / 教師教育 / 社会正義 / 米国 / 条件整備 |
研究実績の概要 |
本研究は教師教育における「批判的省察」実現のための条件整備の在り方を日米比較によって明らかにすることを目的とする。批判的省察は、教師自身による社会構造の相対化が必須であり、教職という専門職としての視点から自律的に思考する必要がある。これには、各教師の動機が不可欠なだけでなく、前提を問い直すための一定の働きかけや「場」の設定(=条件整備)が求められる。本研究では「批判的省察」の原理を詳らかにすると同時に、それを実現するための条件整備の在り方を明らかにする。 具体的には、以下3つの研究課題に取り組んでいる。 第一に、日米両国における教師の「批判的省察」に関する原理と、その条件整備に関する理論の最新動向を明らかにすることである。初年度からの関連文献を収集とともに、2022年度以降、渡米調査を実施し、関連分野の研究者への聞き取りや教師教育プログラムの一次資料の収集を行う。 第二に、日米両国における教師の「批判的省察」を基軸とした教師教育プログラムの理念・実態・課題を、事例調査する。特に、日米における行政・大学・第三セクターの連携によって条件整備を試みた教師教育プログラムの内実を、参与観察、プログラム担当者・受講者へのインタビュー調査を通じて明らかにする。事例検討をとおして「批判的省察」を実現するためのハード・ソフト両面の条件整備の在り方に迫る。事例調査は2022~25年度を予定している。 第三に、上記の検討を踏まえ、日米両国における「批判的省察」実現のための条件整備に関する理論と実践を比較検討、考察し、日本への示唆を提起する。なかでも、公共性の高い社会事業を担う教師にとって「批判的省察」が原理的にいかに重要か、そして、それを促すための条件整備について、大学、教育委員会、第三セクターの連携の在り方はいかなるべきかを考察したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の2021年度には、日米両国における教師の「批判的省察」に関する原理と、その条件整備に関する理論にかかわる関連文献を収集し、検討した。米国では多文化教育や批判的教授学の分野を中心に、「批判的省察」と社会正義とを結びつけて議論されている。こうした論議に着目し、関連文献を収集し、次年度以降、渡米調査を実施する上での、前提を把握することができた。また、日本の関連学会雑誌論文や学会刊行のハンドブック等を収集し、教師論や教師教育研究において「批判的省察」がいかに論じられてきたかを、分析途中ではあるが、端緒を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
教師の「批判的省察」を基軸とした教師教育プログラムの理念・実態・課題を明らかにするために、日米両国において事例調査することに向け、事例の選定と一次情報の収集を行う。特に、日米における行政・大学・第三セクターの連携によって条件整備を試みた教師教育プログラムの情報を収集し、研究を進める。 米国の調査対象として、多様な人種背景を持つ児童生徒への公正性を意識した教員養成・教員研修を、教育委員会・大学・NPO等が協働で展開するワシントン州シアトルとそのモデルとなったカリフォルニア州オークランドを候補としている。日本の調査対象として、大学とNPOが協働で外国人児童生徒学習支援プロジェクトを行う愛知教育大学、大学とNPOが協働で日本語教員養成を行う静岡県浜松市を候補としている。これら日米の行政・大学・第三セクターの連携による教員養成や教員研修プログラムを事例検討し、「批判的省察」を実現するためのハード・ソフト両面の条件整備の在り方に迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、国内・国外出張が制限され、旅費の支出が当初計画より少額となったため。2022年度の旅費等として支出を計画している。
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