最終年度は個別のフリースクールにおける職員養成についてインタビューデータの分析を進めた。日常的な労働の文脈における職員研修のあり方に焦点を当てて分析した結果、日々の業務終了後の子どもへの関わり方等をめぐる話し合いや業務に関連した外部研修の内容を受講していない職員に伝達する実践によって、職員たちは当事者性や批判的考察力といった当該組織の職員に求められる資質を身につけていることが明らかとなった。また、労働者という観点から職員を捉えた場合、組織内の個性を尊重する文化が職員の帰属感を育むとともに、厳格な労働時間管理によって自己研鑽に励む時間を確保することで職員たちの自己実現を後押ししているということも分かった。 併せて、全国規模の職員養成についてもインタビューデータの分析を進めた。分析の結果、フリースクールという独自性の高い実践を通して大人の固定概念を壊すことや、学び合いを重視することで受講者の視野を広げることで、子どもに関わる大人に求められる柔軟性や連携力を育てていくことが養成講座の方針であることが分かった。また、正解を教えないことでセルフ・マネジメント力を育てることを企図していることが明らかとなった。 個別の事例で得られた知見と全国規模の養成講座から得られた知見を比較した結果、全国規模の養成講座は子どもに関わる大人に求められる共通の資質を育てることが主眼であり、そこで培った共通の資質をベースに個別のフリースクールにおいて求められる力量を形成していくという関係性が明らかになった。
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