研究課題/領域番号 |
21K13526
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山口 香苗 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (80843896)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学校 / 地域 / 学校と地域の連携 / 台湾 / コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究は、学校と地域の連携について、台湾と日本の比較研究を通じて、そのあり方と課題について明らかにすること、学校教育と地域コミュニティ形成の関係性について考察することを目的とするものである。 本年度は、台湾における学校と地域連携の議論がどのように進んできたのかについて、先行研究のレビューから明らかにした。研究の結果、明らかになったことは、以下のようである。 台湾では、戒厳令解除後の大規模な教育改革時(1990年代)において、学校と地域の連携につながる議論が始まっていったといえる。これまでの画一的で権威主義・管理主義的な学校教育を改革すべく、学校開放や地域との連携が叫ばれた。学校教育が、子どもの個性や主体性、自発性を重視していく中で、地域と徐々に距離を縮めていくようになったのには、戒厳令解除によって盛り上がっていた住民主体の地域づくりの影響もあったと考えられる。この頃から、学校のコミュニティ化を意味する「学校社区化」の理念が研究者や政府によって提唱され、一部の地方政府では地域に学び場を拡大させ、学校教育と地域の距離を近づける「社区に教室がある」政策を進めるなどしていった。しかし、当時は理念の提唱にとどまり、連携の実践が生まれるのは、少子化が急激に進み出した2010年以降からである。学校の空き教室を活用して地域の学習拠点を設置したり、高齢者の学習組織を設置したりなど、物理的に学校が地域に開かれていっていることが確認できた。 本年度は、教育改革時の資料、社会教育・生涯学習研究者の論考を中心に検討したため、学校教育の視点において地域がどのようにとらえられていったのかについての検討は不十分であったといえる。学校教育のカリキュラムと地域の関係について検討していくことが課題として残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究のレビューによって、議論の大枠と課題が明らかとなり、今後重点的に分析すべき部分が明確化されたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、台湾の学校教育の視点から地域がどのようにとらえられ、学校と地域の連携の議論が進められたのかを明らかにする予定である。併せて日本の学校と地域の連携の先行研究レビューを行い、比較のための素地を作っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの拡大により、学会がすべてオンライン開催となり旅費を使用しなかったため。また先行研究も電子データの公開によって廉価で収集できたため。 差額分は、引き続き先行研究の資料・書籍の収集、消耗品の購入、学会参加のための旅費などとして使用する。
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