本研究は、自閉スペクトラム症(以下、ASD)児がどのような遊びを楽しみ、どのような活動を遊びと捉えているかを調査し、ASD児が楽しいと感じる遊びや参加しやすい遊びの特徴、具体的な遊びを明らかにすることを目的とした。 令和5年度は、ASD児の養育者を対幼児期のASD児がどのような遊びを好み、楽しむのかを明らかにするため、ASD者の保護者を対象に質問紙調査を実施した。その結果、幼児期においてASD児が好み、楽しいと感じる遊びは、運動遊び、感覚遊び、受容遊び、構成遊びであり、苦手な遊びとしては運動遊びやルール遊び、集団遊び、役割遊びであることがわかった。また、一人で遊んでいる時が最も楽しそうだったと評価されていた。 本研究全体を通して、ASD児の好みや楽しいと感じる遊びの結果から、遊び場に運動遊びや感覚遊び、受容遊び、構成遊びを設定することで、ASD児が自ら選択して遊ぶことができる環境となると考えられた。また、使用する道具や遊び方には、ASD児それぞれの好みがあるため、さまざまな道具や遊び方を試し、好きな遊びを探していく必要があると考えられた。 さらに、ASDの特性からくる参加の困難さによって、役割遊びやルール遊びなどに参加しなかったと考えらえる一方で、ASD児が自ら選択しないために参加することがないまま幼児期を過ごした可能性も示唆された。役割遊びやルール遊びなどASD児の参加が難しい遊びにおいては、ASD児が参加しやすいよう遊びを工夫したり、参加のために必要なサポートを行うことで、ASD児の遊びへの参加につながる可能性があると考えられた。幼児期におけるASD児の遊びの幅を広げ、その経験を豊かにするためには、環境の設定だけでなく適切な指導も必要であると考えられた。
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