最終年度に取り組んだのは、本研究の根幹である「所属感」の概念の検討である。「所属感」の概念と、保育実践における「居場所」の捉え方との関係を整理するため、近年の子どもの「居場所」全般に関する研究動向について分析を行い、その結果を踏まえながら考察を行った。保育実践においては日常的に取り組まれている幼児の「居場所」づくりにおいて、特に幼児期後期の集団内の関係性の中における安心感・安定感といった「居場所感」に焦点化するにあたっては、「所属感」という概念が有効であることを示唆した。 3年間の研究全体を通しての成果は次の点である。一つ目は、幼児の集団所属感アセスメントツールの項目修正を行い、実践での活用可能性を高めた点である。本調査では、保護者アンケート調査や個別事例分析を通して、既に開発を行ってきた幼児の所属感を把握するためのアセスメントツールの妥当性や信頼性を検証した。調査結果を踏まえてツール項目の修正を行うことで、実際の実践での活用ができるよう有用性を高めた。二つ目は、ツールによる実態把握の課題点が明らかとなった点である。個別事例分析を通して保育実践でのツール活用の課題点分析を行った。その結果、改めて「所属感」とは幼児の主観的なものであり、個々の特性や前後の文脈に左右されるため、ツールを用いたアセスメントのみでは限界があることが明らかとなった。 以上のことから、保育実践における幼児の集団「所属感」の実態把握を行う場合、本調査で修正を行ったアセスメントツールを用いることで、実態の一つの側面を客観的に把握することは可能ではあるが、それだけに頼ったアセスメントでは個々の把握が不十分であり、ツールを活用する場合であっても、その結果のみで判断せず、幼児個々を多面的な視点から把握することが重要であることが示された。
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