研究課題
「自立活動」における音楽療法的活動として、特別支援学校小学部において音楽教育学および障害児教育学の大学教員、教職大学院生、アドバンスド・プログラム生、特別支援学校教員が、それぞれ異なる立場・視点で意見を出し合いながら授業づくり・実践・協議を行った。児童が音楽活動の中で聴こえてくる音や音楽に耳をすませて動いたり奏でたりすることや、他者を意識しながら一緒に奏でたりやり取りをしたりすることを通して、諸感覚を統合させたり、情緒の安定が促されたり、コミュニケーション能力や社会性を発揮する場面が随所見られ、「自立活動」において音楽を用いることの有効性を確認することができた。一方、課題として、「自立活動」として個々の児童を意識した観点での授業評価の検討が必要であること、音や音楽の扱い方や楽器の選択などの暗黙知の共有化・一般化の必要性が明らかになった。また、「自立活動」における音楽療法的活動として、2018年に中学校特別支援学級で実施した取り組みを論文化し、国際学会誌に投稿した。具体的には、生徒の関心や学校生活に関連付けた活動として、地元の民話をもとに、仕事唄をオスティナートや即興表現でアレンジした合奏を含む音楽劇の創作と文化祭での発表について、音楽活動の留意点と特別支援学級の生徒たちの取り組みを検討するとともに、地域社会の文化的成長を促すコミュニティ音楽療法の視点から、本活動の意義と課題の一端を明らかにした。結論として、①特別支援学級の生徒たちの音楽的なリソースや地域のリソースを活かした音楽劇が、通常学級の生徒や教員、地域の人々との関わりを生み、特別支援学級の生徒たちをエンパワメントする意義をもつこと、②コミュニティ音楽療法の知見は、学校教育におけるインクルーシブ(誰も排除されず、学級や学校の構成員として互いに承認される)教育を志向する活動にも有益であることを指摘した。
3: やや遅れている
コロナ禍の影響により、当初予定していた授業参観およびインタビュー調査が遅延した。調査と分析は次年度に実施する予定である。
授業実践の取り組みについては引き続き継続するとともに、コロナ禍の影響により取り組めなかった授業参観とインタビュー調査および分析を実施する。また、今年度の取り組みの中で見えてきた課題を実践や調査に反映させて進めていく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
和歌山大学教育学部共同研究事業成果報告書
巻: 2021 ページ: 77-82
10.19002/wadaikzsh.2021.77
HNUE Journal of Science - Educational Sciences,
巻: Volume 66, Issue 4AB ページ: 27-32
10.18173/2354-1075.2021-0057