研究課題/領域番号 |
21K13574
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
柴川 弘子 岡山大学, 学術研究院教育学域, 助教 (50875375)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 持続可能な開発のための教育(ESD) / 実践共同体 / 教師教育 / 教員養成 / 学習プログラム開発 / 正統的周辺参加 / 持続可能な開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ESD(持続可能な開発の教育)のための教師教育の発展に向けて、ESDに取り組む教師の実践共同体の形成を促進する、多元的な学習プログラムのモデルを開発することである。対象としている岡山県ユネスコスクール高校ネットワークは、教師の提案により組織された県内のユネスコスクール加盟校のグループであり、ESD推進担当の教師の学び合いの場・教員養成の場としても機能することも展望している。本年度は初年度に実施した学習プログラムを、メンバー教員および教員養成課程の学生を含む学生メンバーらと改善し、実施し、その有効性を測定することを目指した。前年度は全加盟校とブルガリアのユネスコスクールとでSDGsカレンダーを共同制作し、生徒たちが持続可能な開発について学び、相互の国の文化や風習の違いを乗り越え、未来に向けたメッセージを伝え合う内容であった。8月の研修会で、教師たちは共同制作を通じた生徒の成長と学びが大きく、これまでの議論をベースにした交流会より、「何かを一緒に作り、形に残す」ことに有効性を感じていることが理解された。一方、持続可能な社会に関し、本質的な探究活動を進める為にも課題を自分ごととして捉える十分な学習の機会が必要であると感じる教師もいた。学生・教師で協議し、10月の事前学習会では「本当のエコとは?」をテーマに、システム思考を習得するワークショップを実施。12月の実践交流会に向け、各学校でエコ・グッズの制作に取り組み、当日はワークショップ形式で制作した。3月の研修会で、本年の学習・交流会を通じ、持続可能な開発の課題の複雑性への気づき、システム思考の必要性、課題を自分ごととしていくことの重要性と難しさなどを学べたことが確認できた。教員志望学生の存在と成長が、ネットワークの「ESDの学習プラットフォーム」としての存在意義として大きな意味があると感じていることが理解された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度ネットワークの幹事校と交代の際に、加盟校の変更(前幹事校が脱退)があったりしたこともあり、スムーズな引き継ぎが行えなかった模様であること、新型コロナウイルス感染の事情などもあり、例年であれば5月ごろに開催する顧問教員の会合が、8月までずれ込んだため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はネットワークに長年関わってきた教員たちが異動で加盟校意外に転出した。これに対しては、これらの教員たちをネットワーク研修会における「講師」として参画し続けられる仕組みを作りたい。また、こうした状況を鑑み、ネットワークを外部へも開かれたものにする方針を探究する予定である。 加えて、昨年度開発したプログラムの成果として、学校どうしで他校の生徒も参加できるESD事業を、相互に公開していく「ESD相乗りカレンダー」を制作するという新たな試みの提案がでてきている。これは教師たち自らが実践共同体を積極的に組織化していこうとする努力とも捉えられ、このプログラムの有効性についても新たに検証していきたい。 また、実践交流会では、マレーシアで持続可能性について学ぶ大学生がオンラインで、またガーナの留学生も参加し、エコ・プロダクツを共有し、コメントをするように企画したが、こうした交流から得る新たな視点が、生徒たちの成長を支え、実践共同体に意義と価値を与えているものと考えられた。 そこで、今後は同様の課題に取り組む諸外国の機関とさらに連携を深めながら、対面で共同研究会を実施したいと考えている。8月・9月を目処に渡航し、学習された内容がプログラムの開発に活かされるようにする。同時に高校時代からユネスコスクール活動に参画している教員志望学生が、本年度からは実際に教師として、ユネスコスクール等で勤務を開始している。これまでに得られた経験や学びが現場にどう活かされているのかについて、学生および卒業生教師を対象として新たに調査研究を行い、その成果をプログラム開発にも取り入れていく予定である。加えて、ESDに長年取り組む公民館や団体に直接出向いて活動する機会を取り入れた。学生たちが事前学習会や実践交流会の企画をするだけでなく、自らも地域に関わり、実践を経験することを今後も取り入れ、プログラム開発に反映させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初では、11月前半で実践交流会を開催し、11月末の国内学会にて研究成果を発表する予定であったが、実践交流会の開催が12月となってしまったため参加が叶わなかった。一方、国際学会はオンラインで開催されたため、特に旅費や印刷費などの費用が発生しなかった。 今年度は、国内で他地域のユネスコスクールの取り組みを視察したり、海外で対面での学術研究会を開催すること、また、航空券の価格等が高騰していることからも、旅費は想定以上に必要となる可能性があり、そこに補填する予定である。
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