本研究の成果は,小学校・中学校・高等学校における算数・数学の授業を設計する上で大切にすべき点を推論主義の視座から明確化しており,学校教育における算数・数学の授業観をアップデートする可能性を有している.推論主義という哲学が専門的であるがゆえに,一般の学校教員にこの考え方が波及するようにするためには別途工夫が必要であると考えられるが,考え方の基礎を作ったという点で社会的意義がある.また,教科教育研究の成果が一定程度,哲学の分野に還元できることがわかった.一方的に哲学から知見を取り入れるばかりであった教科教育研究の現状に一石を投じるという意味で,学術的意義もある.
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