研究課題/領域番号 |
21K13592
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
田開 寛太郎 松本大学, 総合経営学部, 講師 (40825163)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SLE / ラムサール条約 / 湿地自治体認証 |
研究実績の概要 |
第2年度目の成果として、はじめに、湿地保全活動への住民参加や保育園等の教育施設の関わり方に焦点を当て、兵庫県豊岡市への現地調査を実施した。また、ラムサール条約登録湿地を含む自然環境の保全・再生や利活用に関しては、多様な利害関係者が協力し連携する方法やその在り方には解決すべき重要な問題があることを確認した。さらに、環境に配慮した行動につながる重要な体験(Significant Life Experience)が豊岡では様々な形で展開し、コウノトリの野生復帰や湿地保全活動に活かされていることが分かった。現在、湿地の保全・再生や利活用の水準を高める上でのSLEとCEPAの役割や可能性を明らかにすることを目的に、国内誌論文の投稿準備を進めている。 次に、湿地を生かした地域づくりに関しては、湿地自治体認証を受けた新潟市やラムサール条約登録湿地の葛西臨海公園で現地調査を実施した。新潟市は潟をはじめとする河川や国内最大の水田など、豊かな湿地環境を有しており、湿地に関わる学びや体験の機会を提供する教育施設や市民団体の活動が確認できた。また、松本市の牛伏川の治山治水や奈川区コミュニティスクールの現状や課題、長野県白樺湖や岐阜市の観光産業や福祉施策について現地調査を実施することで、湿地の多元的な価値を再認識することができた。調査の一部の成果は、書籍『シリーズ〈水辺に暮らすSDGs〉』にまとめ、湿地と教育を含む経済・ビジネス、文化、健康などの関係について社会科学的な視点から湿地の価値について論じた。 最後に、日本湿地学会「湿地の文化、地域・自治体づくりと CEPA・教育部会」の定例研究会を開催し、大山上池・下池、志津川湾や出水ツルの越冬地を事例に、湿地を生かした地域づくりについて議論を行った。今後、湿地の保全・再生とワイズユースの推進において、さらに自治体が果たす役割に注目していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、1年目に選定した豊岡市のコミュニティ地区である神美地区及び中筋地区の調査が実施できていない。そのため、行政、教育関係者等との意見交流の機会が失われ、区長会(住民自治組織)、学校教育や社会教育に関する調査が十分にできていない。また、遠方への移動や対面での活動が困難な状況にあり、海外の訪問調査をはじめ、特にラムサール条約登録湿地関係市町村会議に対面参加することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は特定の地区、特に区長会(住民自治組織)、学校、公民館などの社会教育施設への訪問調査に集中し、分析を進める予定である。これにより、充分な調査対象者を確保し、ヒアリング調査を進行させる。 また、日本湿地学会「湿地の文化、地域・自治体づくりと CEPA・教育部会」の共同研究による学会誌特集への論文執筆と合評会を開催し、湿地保全活動と日韓協力、湿地教育とSLE・CEPA、環境行政、ラムサール自治体認証制度等をキーワードに、学術交流を進め議論を深めていきたい。 最後に、豊岡市、新潟市、出水市への追加の現地調査を着実に進めるとともに、各自治体の研究成果を比較し、湿地に関する「ESD」「環境教育/社会教育」の理論構築を試みる。また、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議に参加し、社会教育、及び学校教育関係者へのヒアリング調査及び関係者とのディスカッションを通して、学社融合(学校教育課程に位置付けた湿地保全活動)の可能性を模索し、湿地圏におけるESDの事例調査を進めていく。さらに、自治体認証の事務局機能を持つラムサール条約東アジア地域センター(RRC-EA、韓国順天市)、韓国の認証自治体(済州市・全羅南道等)を対象に訪問調査を最終年度に実施するため、海外の事例研究を進めるとともに、訪問依頼等の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初予定していた出張ができなくなり、旅費の支出がなくなった。 繰越分については、今後の現地調査や事例調査等に充てる予定である。
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