今年度は,1年目,2年目の研究成果に基づき作成されたスクールエンゲージメントを高める学級経営の仮説モデルの検証を行うことを目的としていた。そのため,いくつかの学級で介入を行うともに,前年度に引き続き,学級集団の状態,教育成果,スクールエンゲージメント,部活動集団に関する内容の質問紙調査を年2回実施した。また,介入を行った学級担任教師から学級経営方針などに関して聞き取り調査も実施した。 まず,質問紙調査について分析を行ったところ,スクールエンゲージメントは1時点のみならず,長期的(2年間)にも教育成果と関連することが明らかになった。この結果は,研究1と研究2でも同様の方向性の結果が認められている。そのため,スクールエンゲージメントは教育成果と関連する,という結果は一定程度の再現性があるとともに,頑健な関連であることが示唆された。 次に,介入について,昨年度と今年度,クラス替えが行われず,なおかつ,学級担任教師も同じ学級において行われた。その結果,介入を行っていない昨年度と比較して介入を行った今年度では,スクールエンゲージメントはもとより,学校適応や学習意欲なども向上していたことが確認された。また,このような変化については,学級担任教師への聞き取り調査においても確認がなされた。 本研究では,学級内に規律が定着し良好な対人関係が形成されていると判断される学級集団であっても,スクールエンゲージメントの高低によって教育成果との関連には差異があるという仮説のもと検討を行った。研究期間全体を通して明らかになった知見を整理すると,この仮説は支持されたと考えられる。 一方で,課題も抽出されたため今後さらなる検討を行う必要がある考えている。
|