研究課題/領域番号 |
21K13610
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
石田 明男 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系理数グループ, 助教 (80633619)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 数学教育 / 高専教育 / MCC / 共分散構造分析 / 学習到達度試験 |
研究実績の概要 |
2014年から2017年に実施された国立高専学習到達度試験の熊本高等専門学校熊本キャンパス3学科の第3学年の学生の数学の試験結果を統計分析ソフトウェアRを利用して,共分散構造分析の手法で分析を行った.まず,分析対象のデータとして,本校第1,2学年で学習する内容である「数と式の計算」,「方程式・不等式」,「関数とグラフ」,「場合の数と数列」,「平面ベクトルの性質」,「微分・積分の計算」の点数データを4年分結合したものを利用した. Rを利用して得点データから相関行列を計算し,その結果から「既学習内容の理解度が新規学習内容理解度に影響を及ぼす」、「相関係数が高い項目間にはパスが存在する」という仮説の元,観測変数間の関係のみに対して当てはまりの良いモデルとして適合度指標の値から2つ作成し,パス図で表現した.さらに,得られたパス図から項目間の直接的な影響と間接的な影響を考慮に入れ,第2学年で学習する「微分・積分の計算」と「平面ベクトルの性質」はそれぞれ第1学年で学習する「関数とグラフ」と「数と式の計算」が最も大きく影響していると考えられるという考察を得た. これらの2つのモデルは,2014年と2016年のデータに対しても適合度指標から当てはまりの良いモデルであると判断でき,特に1つのモデルは2017年に対しても特定の適合度指標は比較的良い値を示しており,複数年度を分析することができるモデルを作成することが出来たと考えられる。また,数学の教科指導においては高等専門学校のみならず高等学校でも活用できる結果であると考えられ,フリーソフトウェアであるRを用いているため,他高専の結果や他の同様の試験結果の分析に流用できる結果と考えられる.この結果は広く一般に公表するため,「10.研究発表」に挙げた学会で発表し,雑誌論文が公開されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた通り,複数年度の試験結果の分析,比較を実施ができ,国際学会で成果発表を公表することが出来たため,おおむね順調に進展しているが,新型コロナウイルス感染症への所属機関での対応による業務繁忙や対外的な交流の機会の減少により,他高専との結果の分析という点で協力依頼等の対応が出来ていない状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたモデルは観測変数間のみから作成したものであったが,さらに汎用性を高めるために潜在変数を仮定したモデル作成を試みる.さらに本校の特色を活かした他キャンパスの試験結果の分析を進める.それらの結果が得られた後,当初計画通りに他高専にも協力を依頼し,さらに一般的な分析を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症への所属機関での対応による業務繁忙のため,初年度から研究の進捗状況に遅れが生じたため.
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