国立高等専門学校が高専教育の質保証のために提示しているモデルコアカリキュラムと、教育内容・方法の改善や学生の主体的な学習姿勢の形成を促すことを目的として平成29年度まで実施していた「学習到達度試験」の関連に着目し、本校の数学の授業で第2学年までに学習する単元の間の因果関係を明らかにすることを目的として本校に蓄積されていた学習到達度試験の結果を用いて共分散構造分析を行った。 前年度までに、「微分・積分の計算」と「平面ベクトルの性質」はそれぞれ「関数とグラフ」と「数と式の計算」から最も影響を受けていることが分かっていた。 最終年度では、まずRのpsychパッケージを用いて探索的因子分析を行い、次に先行研究と探索的因子分析の結果から潜在因子を仮定した仮説を設定し、その仮説を表すモデルを作成し、lavaanパッケージのsem関数を用いた6単元と潜在因子の間の因果関係についての確認的因子分析を行った。 探索的因子分析の結果では「関数とグラフ」の得点の高さを表す因子、特に「場合の数と数列」と「平面ベクトルの性質」の因子負荷量が高い「代数的な思考力」の高さを表す因子と考えられる2つの因子が見つかったが、「微分・積分の計算」によく関連した因子を見つけることは出来なかった。前年度までの結果と探索的因子分析から潜在因子が2つ存在することと潜在因子間にも相関があることを仮定し、2つの潜在因子は「代数的理解力(F1)」と「解析的理解力(F2)」であるとして、確認的因子分析により当てはまりの良いモデルを作成した。その結果、それぞれの潜在因子の影響度が高い因子とその程度を表したパス係数を得ることができ、また、それぞれの学習単元で誤差変数も高いため、独自性やその他の因子からの影響も大きいことがわかった。
|