研究課題/領域番号 |
21K13618
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
能田 昴 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 助教 (00803917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 災害救済と教育 / 子ども被災の歴史的実態 / 感染症災害 |
研究実績の概要 |
本研究は、「災害と子ども被災・救済の特別教育史」分野の開拓をめざしながら、そのなかで災害に晒される子どものいのちと発達の問題を考えるため、明治期・大正期を中心に過去の代表的な災害における救済のあり様を、社会的弱者、特に子ども(孤児・障害児者含む)の被災の実態に着目して歴史的検証を行うことを目的としている。 国内外の「災害と子ども」に関わる教育学を中心とする研究の動向把握、日本における災害救済史研究の動向把握を行うなかで、各種の自然災害だけでなく、「スペイン風邪」などの「感染症災害」も対象とした。国際的な防災取組の指針である「仙台防災枠組2015-2030」には「自然災害、人為的要因による災害、および関連する環境的・技術的・生物学的災害とリスク」が明記されており、感染症も「生物学的災害」として検討していくことが必要である。 歴史的な「感染症災害」であるスペイン風邪パンデミックについて、その研究動向とともに、子どもの感染実態や学校等での対応の一端を検討した。他の災害事象と同様に「一過性」のものとして捉えられ、スペイン風邪が子どもに与えた影響や学校対応の実態は等閑視されてきており、教育史研究においても主たるテーマとなることはほぼ皆無であった。 当時、学校教育機関は感染蔓延の温床になる側面もありつつ、当時正体不明の感染症に対して教師・学校医らは様々な予防方法を講じて懸命に対処した。スペイン風邪をはじめとする災害的事象への対応において、学校・教師の果たした役割やその後の教育行政に与えた影響等について明らかにすることも不可欠の課題である。その際、子ども当事者の心情や視点から、各種の自然災害やパンデミックの実相を捉えていくことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
教育学を中心とする「災害と子ども」に関する広範な研究動向把握が必要であるが、コロナ禍を受けて取り組んでいる「感染症災害」に関する検討に集中していることが理由である。明治・大正期を中心とする各種の災害的事象について、「学校」や「教育」の視点を中心に置きながらも、教育史・社会福祉史・社会事業史・公衆衛生史など、領域横断的なレビュー・動向把握が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
「災害と子ども」に関する領域横断的なレビューの中で、濃尾震災や関東大震災などの地震災害や、取り上げられることの少ない感染症災害に焦点をあてる。特に子ども・当事者の視点や実態を重視しながら、被災実態や具体的な救済処遇の内容の検討、特にその後の生活・人生や成長・発達への影響について明らかにする。 また、COVID-19対応のなかで学校が子どもを保護し、支えるシステムであることも改めて明らかになってきていることも踏まえて、感染症をはじめとする災害史の中で軽視されがちな学校教育機関が果たした役割や課題、その後の対応の継承・制度化の如何も含めて解明していくことも課題となる。
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