研究課題/領域番号 |
21K13619
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
関森 英伸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (80572396)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 発達障害 / 相談支援 / 困りごと |
研究実績の概要 |
2021年度において、発達障害者相談支援システムの開発に向け、まず、4期にわたって行ってきた発達障害者の社会参加状況に関する追跡調査より得られたデータ整理を行った。具体的には、保護者が子育てで遭遇した“困りごと”の抽出とカテゴリー整理である。 これまでに収集した発達障害児者(知的障害を伴わない2~29歳)の保護者の抱える“困りごと”を8カテゴリー(運動、生活、行動、対人、学習、進学、就労、その他)143項目に整理した。 次に、この143項目に整理した“困りごと”を『家族の“困りごと”リスト』とし、これまでに追跡調査に協力した保護者87名に閲覧依頼した。同時に保護者に自分の子育てを振り返ってもらい、これまでに子育てで経験した“困りごと”に対し、“解決方法”やその後の経過を返答用紙、メール、Google formsのいずれかで回答依頼した。 保護者53名から回答(60.9%)があり、143項目のうち87項目(60.8%)について保護者からの何らかの“解決方法” が合計215件収集された。保護者の“困りごと”に対して“解決方法”が多く寄せられた内容は、運動面の運動が苦手/不器用さがある、生活面の片付け/整理整頓が苦手、行動面の行き渋り/不登校、対人面の言葉の遅れ、学習面の学習の遅れ/成績不良、就労面の就職できるか不安、その他の自分に発達障害がある事は知らない(障害告知をどうするか)等、多岐にわたっていた。保護者から収集した“解決方法”を整理すると、幼児期から成人期まで幅広い時期の内容が確認でき、専門機関/専門職の対応に留まらず、家族が子育て中に子どもの特性と向き合いながら対応した状況が具体的に確認できた。 2021年度後半にこれまで蓄積した情報をもとにシステムエンジニア(以下SE)の協力を得て『“困りごと”解決システムmama and ...』を作成し、2022年度に運用を開始する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は2年かけて以下の研究計画に基づき展開している。2021年度は、①“過去4期の研究成果データ”を用いた“困りごと”のカテゴリー整理、②①を用いた追跡調査対象者への“解決方法”の収集、③データの“困りごと”、”解決方法”のライフステージごとの整理、④データの申請者所属専門機関発達障害支援職員への情報確認と補填、とここまでは順調に進んだ。しかし、⑤データをもとにした業者への相談支援システム試作依頼/完成、⑥相談支援システム試作の各種ICT機器を活用した試験運用と調整、では当初予定していた既存のFQAシステム(ナレッジリング)を用いたカスタマイズが難航し、新たに地元SEの協力を得て、本研究の目的や方向性を説明し、協力を得て1からシステムを立ち上げる形をとった。このため、打ち合わせを行い、各種手続きを行いながら、SEに3ヶ月という限られた期間でシステム構築を行ってもらい、2021年度末に仮完成となり、研究者がシステム管理等の説明をSEから受けた状況で2021年度を終了した。このため、システムはオリジナルのものとなりアプリ化することは断念した。また、2021年度末には専門機関活用中の新規対象者(300名)への相談支援システム活用協力者募集を行ったが、システムの準備が遅れたこと、保護者がある程度の障害受容されていないと依頼し難い、という理由等から、2021年度末に当初の目標である300名には到底及ばない28名からの研究協力に留まった。 2022年度は、2021年度に仮完成した相談支援システムを調整後に閲覧してもらい、“解決方法”の効果(4件法)収集および新たな“解決方法”の収集を行い、アクセス数やシステムで得られた情報、更に研究参加者からのアンケートを分析し、『“困りごと”解決システムmama and ...』の有用性を検証していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
上述した通り、2022年度の研究計画は、①2021年度に仮完成した相談支援システムを閲覧してもらい、“解決方法”の効果(4件法)収集および新たな“解決方法”の収集を行い、②アクセス数やシステムで得られた情報、更に研究参加者からのアンケートを分析し、『“困りごと”解決システムmama and ...』の有用性を検証していくことである。 ①については、システム利用者(研究協力者)を増やす必要がある。これについては、研究協力施設における新規研究参加者への研究説明・フライヤー配布に関わる職員(医師、リハビリテーション職種、事務スタッフ)に対して改めて本研究の目的や方向性を説明し、合わせて仮完成した本システムを使用してもらう機会を設け、その上で研究協力の可能性がある保護者への説明・配布を行ってもらう予定である。また、2021年度までに研究者の研究に参加したことのある保護者であり、実際に相談支援システムニーズのあった方々にも研究協力依頼し、実際にシステムを活用してもらい意見をもらう予定である。 現状では、2022年度内にシステムの有用性の検証を行う計画で、4~8月(青年期までの対象者が新年度を開始し夏季休暇終了するまでの期間を想定)を協力期間と設定したため、300名の研究協力者募集は現実的ではないため、100名を目標に上記の対応策を講じていく。 ②については、①の研究協力者のシステム活用が大きな影響を与えることが想定される。このため、システム内の「お知らせ」・「コラム」機能、「メーリングリスト」を定期的に活用し、本研究の協力者へのシステム活用の促しを行っていく。また、9月以降、システム内の情報をSEの指導を受けながら収集・分析し、特性や有用性を検証していく。更に研究協力者へのアンケート内容について、今後のシステムの修正・発展に向けて質問項目の選定を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2021年度に完成する予定であった支援システム完成が2021年度末時点で仮完成(仮納品)の状況に留まり、2022年度に入り各種確認後に完成(納品)となるためである。
|