研究課題/領域番号 |
21K13631
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
大嶋 玲未 目白大学, 心理学部, 専任講師 (50755684)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 障がい者雇用 / ダイバーシティ / 組織風土 |
研究実績の概要 |
障がい者雇用の推進は企業の重要課題である。しかし先行研究からは、障がい者雇用推進により職場の組織成員の多様化が進むと成員間での軋轢が生じる等のリスクが発生することも予想される。そこで本研究課題では、障がい者雇用を進める現場での組織成員の多様化による悪影響を抑制するメカニズムを解明し、「障がい者の雇用促進/職場定着を両立させる職場内環境モデル」を構築すること、そして、モデルの検証を通じて障がいの有無にかかわらず従業員が定着し、より健康に生き生きと働ける職場づくりに寄与することを目的としている。 初年度にあたる2021年度は、障がい者雇用を進めるグループ企業3社において、職場に占める障がい者の構成比率の向上が、従業員(障がい有・無)に及ぼす影響、及び、その影響における組織風土(障がい者ダイバーシティ風土)の調整効果を検証した。分析の結果、職場に占める障がい者の構成比率を表す「ダイバーシティ度(Blauの多様性指標)」が従業員(障がい有・無)の個人指標に及ぼす影響は有意ではなかった。しかし障がいのない従業員では、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を表す「ワーク・エンゲイジメント」に対して、「ダイバーシティ度」と、「働き方の多様性風土」の交互作用が有意であった。この結果から障がいのない従業員では、障がい者雇用が進み職場の障がい者比率が高まる際に、自分の職場には働き方の多様な選択肢が用意されており、自分で働き方を選択できると感じられることが、より健康で生き生きと働くうえで重要になる可能性が示唆された。一方、障がいのある従業員の個人指標を目的変数とした同様の分析では、有意な結果が得られなかった。これには使用した変数の一部を障がいのある従業員当人に尋ねていなかったことが関係している可能性も考えられ、今後の検討課題となった。これらの結果は、産業・組織心理学会 第36回大会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に予定していた分析モデルが、当初の計画からの大幅な変更なく検証できた。また、今後の調査設計に繋がる新たな示唆も得られたことから「(1)当初の計画以上に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の調査を通じて、障がい者雇用推進時の職場環境づくりにおいて、職場管理職の影響が大きいことが再確認された。そこで2022年度には職場管理職に焦点を当てた質的調査により、障がい者雇用を進める現場における職場環境づくりのプロセスについて検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間延長を行なっている前研究課題と同時に検討を進めたことから、経費が抑えられ差額が生じた。差額は、再来年度以降予定しているWeb調査にて使用予定である。
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