研究課題/領域番号 |
21K13634
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研究機関 | 山口学芸大学 |
研究代表者 |
門脇 弘樹 山口学芸大学, 教育学部, 講師 (40868569)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 歩行 / ベアリング / 歩行の変動性 / 足圧 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ベアリングに影響を与える要因を歩行機能等の客観的な指標から明らかにし、視覚障害者の歩行に関する総合的評価法を開発することである。 令和3年度は、客観的指標を用いた歩行評価と歩行のリスクの関連について検討するために、すでに収集していた視覚障害者12名の歩行課題(13m)の結果を分析した。この分析では、視覚障害者のベアリングと足圧の変動(以下,足圧CVとする)との関連について検討した。ベアリングについては、歩行路の中心を0とし,そこからの絶対量をベアリング値と定義した上で、ベアリング値が1.8m未満であった歩行軌跡を1.8m未満群,1.8m以上であった歩行軌跡を1.8m以上群に分類した。足圧については、母趾・母趾球・前足中央・小趾球・土踏まず・踵外側・踵の計7部位およびそれらの合計値を計測し、各部位の変動係数(標準偏差/平均値)を求めた。1.8m未満群と1.8m以上群の足圧CVを比較した結果、1.8m以上群は踵外側・踵の部位で左右足に有意差が認められた。特に,左足と比較して,右足の足圧CVが有意に大きくなった。このことから,歩行中の片足の踵外側・踵の部位で足圧CVが大きくなることで進行方向の維持が困難となり,ベアリングが誘発されると推察された。さらに,1.8m以上群における小趾球の足圧CVは,1.8m未満群と比較して変動が大きくなる結果となったことから,ベアリングが誘発されると小趾球の足圧CVも大きくなると考えられた。 この結果から,足圧CVがベアリングに影響することが明らかとなり、客観的歩行評価の指標の一つとして足圧CVが有効であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、歩行測定装置を用いて、歩行機能等のベアリングへの影響について分析し、視覚障害者の歩行における総合的評価法の基礎となる重要な知見を得ることができた。ベアリングに関する従来の研究では、歩行中の足圧の視点からは十分に検討されておらず、足圧CVとベアリングの関連がみられたのは今後の研究を進める上で意義のあることだと考える。令和3年度に得られた成果については、次年度実施予定の弱視状態での歩行においても検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、弱視状態での歩行について、これまでの研究と同様に客観的な指標を用いて研究を実施する予定である。具体的には、視野に関する条件として中心視野狭窄条件と中心暗点条件を設定するとともに、眼球運動の視点からも分析を行う計画を立てている。実験では、晴眼者および視覚障害者を実験参加者とし、視野がベアリングに及ぼす影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、(1)新型コロナウイルスの影響で計画していた実験が実施できなかったこと、(2)学会等がオンライン開催になったことが挙げられ、これらの理由から予定していた予算を使用することができなかった。令和4年度については、新たな実験を実施予定であり、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた上で、柔軟に研究を遂行していきたい。
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