令和3年度および令和4年度は、キャリア展望を軸とした往還と学習を探索したが、最終年度である令和5年度は、それ以外の文脈における往還に関する調査に加え、正課と正課外の往還を促す学習支援方法について期間全体の調査を踏まえた考察を行った。 キャリア展望を軸としない正課と正課外の往還は、一方において解決すべき問題状況に直面し、他方で得た知識や経験が適応可能であるという認識が生じた場合にのみ生起し、それ以外の場合は基本的にそれぞれの活動は断絶状態にあることが分かった。また、学生が一方で獲得した知識や経験を他方へと適応して問題状況を解決しようとする主体性は、その前提として両方の活動への強い関与がなければ形成されず、従って学生の両活動への動機づけや参加の保障などのデザインもまた重要であることが分かった。 3年間の調査を踏まえ、(1)学生は正課と正課外の学習活動でそれぞれ異なる経験を通じ、異なる学習成果を獲得していること、(2)それぞれの学習活動で得た学習成果を統合しその意味を拡張させることが往還を通じた学習の一形態であること、(3)両活動の往還は、キャリア展望に基づくリフレクションや一方の問題状況解決に向かう場面において生じる可能性があること、(4)さらにその前提として両活動への強い関与が必要であること、(5)ただし、往還を通じた学習は容易に生じず分断されがちであること、(6)往還を通じた学習を促すためには両活動への強い関与を保障する仕組みを構築するとともに、問題状況等の解決のために他方で得た学習成果の適応可能性を検討させるリフレクション等の機会を設定すること、が必要である。 今後は、正課と正課外の両学習活動への強い関与を保障する組織的支援の在り様や、リフレクション等を促す具体的介入方法の検討が、課題として挙げられる。
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