研究課題/領域番号 |
21K13659
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
木村 優里 明治学院大学, 心理学部, 助教 (80611970)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アマチュア科学者 / 市民の科学実践 / 科学愛好家 / 科学教育 / サイエンスコミュニケーション / 市民科学 / シチズンサインエス |
研究実績の概要 |
本研究は、大人になってからも科学に対する興味関心を持つことができるしくみや支援方法の検討という課題に対し、「科学実践に関わる市民」という側面からアプローチを試みる研究である。科学への興味を一度失ってしまった児童・生徒や成人が、もう一度科学に興味を持ったり、科学に参画したりすることを支援するために、「成人が科学実践に参加できる誘因」と「市民が科学実践に参入し、その継続を可能とする支援方法」を解明することを目指している。 2021年度は、「科学実践に関わる市民」を捉えることができる新しい理論枠組みの検討を行った。具体的には、まず、これまで先行して検討していた、「アマチュア科学者」の定義に関わる部分を、書籍の担当章の原稿の一部として公刊した.これは、Kimura(2021)の第2節 ” 2 Who Are the Amateur Scientists in the Third Position?” の部分に相当する。そして、この「アマチュア科学者」を含む、「科学実践に関わる市民」に関する先行研究を概観し、彼ら彼女らは、科学実践における活動の範囲、関与している期間(継続性)、費やす時間の度合い(積極性)、知識・技能、参加動機・目的、コミュニティとの関わり方、参入のきっかけ、などの点において多様性があることが示された。そして、これらの結果を基に、理論枠組みを検討し、「科学実践に関わる市民」を複数の存在から構成される「科学アマチュア群」と捉え、「アマチュア科学者」「科学愛好家」「科学趣味人」「科学新参者」「科学道楽人」といった概念に整理した。現在その成果をとりまとめているところである。 Kimura, Y. (2021). Amateur Scientists: Unique Characteristics and Possible Factors Supporting Japanese Amateur Scientists’ Continuous Scientific Practices. Isozaki T., Sumida M. (eds). Science Education Research and Practice from Japan. 85-108, Springer. (2021/07)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画において2021年度は、「科学実践に関わる市民」を捉えることができる新しい理論枠組みの検討を実施する予定であった。具体的には、新しい理論枠組みの検討と研究成果の公刊を予定していた。この計画に対して、先行して検討していた「アマチュア科学者」の定義に関わる部分の公刊、「科学実践に関わる市民」に関する先行研究の調査、及び理論枠組みの検討などについては、予定通りに進めることができた。しかし、理論枠組みの検討結果を取りまとめ、研究成果として公刊するまでには至らず、この部分については、現在執筆中であり、仕掛の状況にある。また、次年度の研究準備として、必要に応じて大規模調査の準備を進める予定であったが、こちらについても準備の途中段階である。 そのため、研究成果の公刊までは至らなかった点を踏まえ、本研究は当初の予定よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、以下の研究を進める予定である。 まず、2021年度に検討した、「科学実践に関わる市民」を捉えることができる新しい理論枠組みを、研究成果として公刊することを目指す。 加えて、「科学実践に関わる市民」の科学実践への参入契機を明らかにし、どのような誘因があるのかを、年齢などの参入段階別に分析し、明らかにすることを目指す。この調査は、既に実施した質問紙調査の結果(アマチュア昆虫学者70名、アマチュア天文学者28名)に加え、先行研究をもとに分析を進める。これは、2021年度の理論枠組みに関する調査によって、先行研究においても「科学実践に関わる市民」の参入契機は注目されており、本研究の参考とできる見通しを得ることができたためである。そのうえで、新しく調査が必要であれば、大規模調査を実施し、その結果を含めて分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた研究成果の発表及び公刊に伴う費用と、大規模調査にかかる費用が未執行のため余剰が生じた。これらについては、次年度実施予定である。 また、調査や研究発表のための旅費についても、コロナ禍における各種学会のWEB開催などによって、予定よりも安価に抑えられ、余剰が生じた。次年度以降は、社会状況に応じて見通しが不明瞭な部分もあるが、調査や研究発表のための旅費が生じる予定であり、その費用に充てることを計画している。
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