研究課題/領域番号 |
21K13665
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐井 旭 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 助教 (30868039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダーティー・ワーク / サニテーション / サニテーション・ワーカー / 廃棄物処理 / 都市スラム / インドネシア / メンタルヘルス / COVID-19 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)蔓延およびそれに伴う行動・旅行規制が緩和した本年度は、現地カウンターパートであるNational Research and Innovation Agency(インドネシア国立研究革新庁)のサポートの下、実際に現地フィールドに渡航し、おもに以下について調査を実施した。 都市スラムで働くサニテーション・ワーカーのメンタルヘルス: ストリート・クリーナー(路上清掃人)およびごみ集積場で働くごみ収集人それぞれに対し、既存の質問紙を用いてうつ病スクリーニングを実施したところ、うつ症状に関しては、「中等度のうつ症状(Moderate)」を示す割合がそれぞれ80%、70%を超えており(おもに30代後半~60代前半に集中)、「重度のうつ症状(Severe)」を抱える者が30%ほど確認されたことから、精神的健康に深刻な影響をおよぼしていることが懸念される。また、不安および、スティグマ(特に外見への蔑視)と関係があるとされる、他者からの自身の外見への評価に対する恐怖(Fear of Negative Appearance Evaluation)は、うつ症状を誘発する因子であることが明らかとなった。さらに、COVID-19への感染恐怖(Fear of COVID-19)およびうつ症状は、不安症状の寄与因子であることが示された。個人の精神的健康に影響をおよぼすその他の要因について、対象者ほぼ全員に対し詳細な聞き取り調査を実施し、現在主題分析が進行中である。 上述の調査結果の一部に基づいて、すでに国際シンポジウム等で発信を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、COVID-19パンデミックの緩和によって、現地協力機関のサポートの下、本格的な現地渡航・調査が可能となり、上述のデータを収集することができた。すでに、国際シンポジウム等においても研究発表を行っている。 さらに、元々の調査対象であるごみ収集人に加え、現地政府機関の協力を得て、ストリート・クリーナー(路上清掃人)にもアプローチすることができた。 このように、現地渡航調査が可能となったこと、また、調査対象の拡充により、今後の調査内容の幅の広がりが期待できる。 しかし、パンデミックの影響により、初年度の現地渡航が困難であったことから、従来の研究計画に遅れをとっていることを鑑みて、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、労働環境および内容がサニテーション・ワーカーの健康におよぼし得る影響について、精神的健康のみならず、身体的健康にも焦点を当て、現地にて各種計測(身長、体重、血圧、唾液採取によるストレスレベル、既往歴など)を行い、既得データと照らし合わせ、包括的な理論構築を行う。 さらに、国際シンポジウム等で積極的な研究発信を行い、世界各地の同対象集団について調査を行う海外研究者との共同研究体制の構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックおよびそれに伴う行動・旅行規制が緩和したことにより、現地への渡航が可能となったものの、調査対象国における行動制限により、現地参加を予定していた国際シンポジウムがオンライン開催となるなど、旅費の執行に制限がかかることとなった。 今後は、現地調査に加え、収集したデータに基づく調査結果の発信について、国際学会(現地開催)等への積極的な参加を予定している。
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