研究実績の概要 |
令和5年度は,令和4年度に実施された縦断調査を継続し行い(約2年間),既存の縦断調査や大規模横断調査のデータセットを用いて,レジリエンスを予測する因子の検討を行った。これらの概要ならび知見を以下にまとめた。 1.20―79歳の日本人成人486名を対象にした3時点(約1年間隔,計2年間)の縦断調査のデータを用いて,マインドフルネスとセルフ・コンパッション,レジリエンス,抑うつ症状の関連を検討した。媒介分析の結果,ベースラインのマインドフルネスとセルフ・コンパッションがベースラインから約1年後のレジリエンスを介し,ベースラインから約2年後の抑うつ症状に対する負の間接効果が確認された。この結果から,マインドフルネスとセルフ・コンパッションを介したレジリエンスへのアプローチの有効性が考えられる。 2.30―59歳の日本人成人579名を対象にした5時点(約3ヶ月間隔,計1年間)の縦断調査のデータを用いて,レジリエンスと身体活動の関連を検討した。変量効果モデルによる分析の結果,仕事での身体活動と座位活動についてはレジリエンスの資質的要因に対し正の関連が示され,一方で移動と余暇活動での身体活動は獲得的要因に対し正の関連が認められた。身体活動によるアプローチにおいては身体活動の種類とレジリエンスの組み合わせの効果の特徴を考慮する必要がある。 3.15―93歳の日本における大規模調査のデータセット(N = 52,415)を対象に,レジリエンスとさまざまな変数との関連を検討した。レジリエンスは神経症傾向と抑うつ症状と負の相関,神経症傾向以外の特性や人生に対する満足度,運動習慣とは正の相関であった。また居住地域の生活必需施設や商業・大型施設の近さ,交通の利便性,地域住民との社会的結束がレジリエンスの高さに関連した。すなわち,レジリエンスを予測する因子は個人を取り巻く内外と多様であることが示唆される。
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