研究課題/領域番号 |
21K13700
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西田 勇樹 立命館大学, BKC社系研究機構, 専門研究員 (70844306)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 洞察問題解決 / 創造性 / ワーキングメモリ |
研究実績の概要 |
本研究は洞察問題解決における意識的な記憶検索の影響について検討するものである。洞察問題解決を解く問題解決者は,誤った解の方向性に固着してしまい,それによって解決が困難になる。我々の過去の研究は,洞察問題を解いている参加者に画面に呈示された映像の中に問題のヒントが表示されていたことを伝えると,問題解決の成績が低下することを示した(教示の低下効果)。本研究では,教示の低下効果のメカニズムを検討することを目的に3つのオンライン実験を実施した。教示の低下効果は呈示された映像の記憶を検索しようとする認知過程によって起きると考え,ワーキングメモリとの関連性を検討した。3つのオンライン実験の結果,教示の低下効果を再現することはできなかった。またワーキングメモリとの関連性も認められなかった。過去に得られた結果も合わせて考えると,教示の低下効果は,参加者が他者(実験者)からの評価を過剰に意識してしまう(評価懸念)あまりに起きたと考えられる。この結果を東北大学で開かれた電子情報通信学会ヒューマン情報処理研究会で成果を発表した。 また,洞察問題解決では答えの知識が解答に影響するため,参加者に繰り返し出題することが困難である。そこで繰り返し洞察問題解決の測定が可能な問題,遠隔連想課題(remote associates test; 以下,RAT)の日本語版を過去に作成した。本課題の一環として,RATの洞察問題としての妥当性を検討した論文を執筆し,受理された。この論文での主張は,日本語版RATのパフォーマンスは洞察問題解決における典型的誤答から逸脱する能力と関連すること,そして,洞察問題を解決する能力は必ずしも一般化できるものではないということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
意識的記憶の検索による洞察問題解決の阻害は実験で再現することはできなかった。しかし,複数のオンライン実験を通してどの方向性に舵を切るべきか明確になった。具体的には,評価懸念を意識させるような実験によって教示の低下効果を再現できるのではないかと考えている。また新しい洞察課題の議論を通して,洞察課題(RAT)の活用について示唆を得ることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,参加者の評価懸念に着目しつつ,教示の低下効果について検討する。参加者が実験者からの評価を懸念するのと同時に,思い出すよう教示を受けることで,自身の問題解決行動を過剰に意識してしまうあまり,新しい発想の転換に至ることができなかったと考えられる。今後は,参加者の問題解決行動が他者から評価されているように思わせる状況を設計し,実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
もう一つのオンライン実験を実施し実験の謝礼金として使用する予定であったが,実施に至らなかった。そこで,当該年度で実施するオンライン実験を1つ追加して検討を進める予定である。
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