研究課題/領域番号 |
21K13706
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
桑原 晴子 就実大学, 教育学部, 教授 (70434769)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 共時性 / Pauli / 易経 |
研究実績の概要 |
本研究は,C.G.Jungによって提唱された共時性という概念の成立過程と現代的意義について明らかにすることを目的とする。 2021年度については研究1の共時性概念の発展過程に関する文献研究を中心として進めた。①のPauli,W.との関係性が共時性概念の発展過程に及ぼした影響については,『The Pauli-Jung Letters』,JungのCWの関連文献等を概観し,先行研究において指摘されているPauliの夢やイメージが共時性概念の発展と不可分だという見解について再検討を行った。Jungは,Pauliと出会う前30年以上にわたりJames,W.の思想から深く影響を受けていたのと同様,Pauliという他者との出会いの中で自らの思想を大きく展開させている。それはPauliの夢イメージが詳細に分析された『心理学と錬金術』のテーマである錬金術の営みとパラレルであるであることについて検討を行った。この視点については今後論文化する予定である。 次に,②の易経との関連については,現時点で国内で手に入る文献については収集を行い,概観を行った。易経(I―Ching)の研究は,内界と外界の意味ある偶然の一致という共時性という視点の中で重視され,現代においても心理療法のプロセスの中でI-Chingを活用することを重視する分析家もいる。そこでは,I-Chingを通して共時的な体験が生成すると,個人的な無意識を超え,Jungのいう元型的なこころの層に触れること,その体験を通して個人のコントロールを超えた力とのつながりを実感し,全体性を回復する心理療法の転換点としての意義が見出されている。ただし,この易経の文献研究については,海外での資料収集が叶わず,必要な文献が十分得られなかったため,今後も考察を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は新型コロナウイルス感染症の状況で,本務校の行動制限指針のために本来の計画にあった文献収集のための海外出張ができず,ETH他,スイスの研究機関所蔵の文献について収集をすることができなかった。そのため,文献研究については,国内で手に入れることができる資料を中心に検討し,新たな視点を見出すことはできたものの,外国での資料収集によって包括的な資料収集ができなかったため,「(4)遅れている」と判断した。現時点の文献研究の考察については,今後さらに資料を増やして再度検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画の推進については,本年度中に海外での文献収集を行うことが必須であるが,2022年度5月現時点においても,本務先から海外出張の許可が下りないため,今後の計画に大きな影響が出ることが予想される。他大学では海外での研究活動が下りる状況にはなってきているものの,本務校の活動制限指針については教員個人ではどうしようもできない部分があるため,資料収集の時期等も現時点では未定である。今後本務校の活動制限指針が緩和され,海外出張が可能になった段階で,できるだけ早く計画を立て資料収集の実施をしていく予定である。 また2022年度は本来であればインタビュー調査研究も行う年度であったが,上記の通り,研究計画に遅れが出ているため,本年度は国外での資料収集とその成果の論文化に注力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度については,スイスでの資料収集のための旅費を計上していたが,上述のように新型コロナウイルス感染症の状況により,海外出張が禁止されていたために,旅費を使用できなかったため,次年度使用額が生じている。2022年度については,2021年度に行う予定であった文献研究のための資料収集の旅費を使用し,調査研究のための旅費は2023年度に使用を延期する計画である。万が一,2022年度に本務校の活動制限指針が変更されず海外出張の許可が下りない事態になった場合は,大幅な計画変更を余儀なくされる可能性がある。
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