研究課題/領域番号 |
21K13717
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
西尾 祐美子 畿央大学, 教育学部, 講師 (50801594)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 夫婦関係 / 心理的アセスメント / カサンドラ症候群 |
研究実績の概要 |
当該年度は,ASD男性の妻(5名)を対象にインタビューを実施し,不適応の実態や支援ニーズについて把握することを目的とする研究1に着手した。研究1を通じて,未だ先行研究が数少ないASD男性の妻の主観的な体験である記述的知見・理論をボトムアップ的に積み上げる。 自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受けている男性の妻(5名程度)に調査委託会社を通じて,オンライン上で半構造化インタビューを実施した。事前に,医学的診断に関する確認に加えて,①AQ(ASD男性の妻が,夫について回答),②POMS-2(ASD男性の妻が過去1週間にどのように感じたか,自身の気分について回答)を実施したうえで,対象者の選定を行った。インタビューの内容は,①夫の診断(いつ,どのように知ったか,周囲に打ち明けているかなど),②日常生活での困難な体験(対処法や解決した経験も含む),③サポート(現在受けているものや今後必要と感じるもの)であり,夫婦関係で妻が困難を感じる(感じた)出来事を中心に,具体的な状況や過程,どのような問題が潜むか,妻自身はどういった支援を求めているかについて尋ねた。 結果については,現在も引き続きテキスト分析により検討中であるが,発達障害が社会的に認知される以前との比較や,COVID-19による日常生活の制限への言及,夫が診断を受け入れる前後の変化に関する語りが顕著であった。また,ASD男性の妻の支援ニーズとしては,同じ境遇にある人との関わりや,「生活」に直結する「仕事」という面で,夫が働く上でのサポートがうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り,初年度に文献調査を通じてインタビューガイドを作成したうえで,半構造化インタビューを実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究2として,研究1におけるインタビューでの語りを分析し,尺度項目を選定したうえで,ASDの診断を受けているまたはASDの疑いがある男性の妻(50名程度)にアンケート調査を行う計画である。比較検討のため,対照群として既婚女性(200名程度)にも同様の調査を実施する。カサンドラ症候群の症状や研究1の結果などを踏まえ,対人的疎外感尺度(杉浦, 2000)や心理的ストレス反応尺度(新名他, 1990)等、関連する尺度についても調査項目に含める。 令和4年度は研究1の結果の分析および研究2のアンケート調査の実施(研究1と同様に調査委託会社に依頼)を推進する見通しである。令和5年度には研究1と研究2で得られた結果のアウトプットならびに総合的考察より,ASD男性の妻をどのように支援すべきかについて,臨床的示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大が継続したため、国内外の学会や研修会がオンライン開催となり、旅費が当初の計画よりも大幅に削減された。また、物品費として最新のパソコンを購入する計画であったが、インタビューによるデータ収集が年度末になってしまったことから、データ処理の経過に沿っていずれのスペックのものにするかが決定しきれず、支出が間に合わなかった。学会や研修会については、今後の動向を見ながら旅費等を検討し、物品費については次年度以降で計画していたものの購入を進めていく予定である。
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