研究実績の概要 |
メンタルヘルス不調が悪化する過程には、仕事時間外に仕事との距離(心理的ディタッチメント)が取れないことや反芻(仕事のことを考えてしまうこと)が関わっている。しかし、人が必要と思っても休めず、仕事のことを考えてしまうことの機序については十分わかっていない。本研究では、この過程への実行機能(状況を概観し、不要な反応を抑え、効果的に意識を切り替える脳の機能)の関与を検証する。本年度は、日本語に翻訳した仕事関連反芻尺度について、COSMINのガイドラインに基づき、信頼性と妥当性を検証した。認的因子分析の結果(n=309)、15項目中2項目で2因子への因子負荷が認められたが、大方原版と同様の3因子構造(情緒的反芻(AR)、ディタッチメント(DTM)、問題解決の思索(PSP))において、事前に設定したモデル適合度の基準を満たした(CFI=0.963, RMSEA=0.051, SRMR=0.058)。事前の予測通り、ARとDTMの負の相関、反芻尺度(高野・丹野, 2008)の正の相関、PSPと内省尺度(高野・丹野, 2008)の正の相関、DTMとリカバリー経験尺度の心理的ディタッチメント(Shimazu et al, 2012)の正の相関が認められた。また、ARと疲弊尺度(熊谷ら, 2021)の正の相関、Well-being尺度の負の相関、DTMと疲弊尺度の負の相関、Well-being尺度の正の相関が認められた。アンカー項目で変化なしと答えた対象者のみのデータを使って、再検査の信頼性(ICC)を求めたところ、ARは0.86(n=121)、PSPは0.79(n=127)、DTMは0.73(n=117) であった。
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