研究課題
本研究の目的はコミュニケーションにおける自閉スペクトラム症(ASD)者の身体同調特性を解明し,ASDに対する客観的なバイオマーカーを開発することである.具体的には,位相差検出・分析アルゴリズムを用い,コミュニケーション中に発生したASD者の身体同調特性を定量化し,定型発達(TD)者との相違を検証する.R4年度は一方向言語コミュニケーションにおける身体同調特性の検証を行った.特に,ASD者の聴者としての役割に着目し,実験を進めた結果,ASD者はTD者より同調の活動度(発現頻度)と強度(時間変動と収束性)が有意に低いことが明らかになった.R5年度はASD者が話者と聴者として参加する双方向コミュニケーション(自由会話)に着目し,実験を進めた.その結果,双方向コミュニケーションにおいても身体同調特性に相違が見られる可能性が確認された.具体的には同調の活動度と強度のみならず,同調の前後関係においても有意な差が見られる可能性がある.今後重症度との関連を調べる必要はあるが,本研究によりASD者の同調特性は量的側面(発生頻度)と質的側面(時間変動と収束性)の両方から相違点が現れることが示唆された.本研究の成果により身体同調はASD者の社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の特徴を定量化できるツールであり,特に位相差検出・分析アルゴリズムはその定量化に有効であると考えられる.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
PLoS ONE
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Multisensory Research, Brill
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