本課題はうつ病に対する認知行動療法について,その脳作用機序に基づいて補強・増強するハイブリッドな治療戦略を検討するものである。そのため,令和3年度は治療対象となるうつ病の病態理解を進めるとともに,開発したニューロフィードバック技術の実行可能性の評価を行うこと,認知行動療法の作用プロセスを実際の面接場面から明らかにすることを目的とした。 うつ病の病態理解については,うつ病の異質性を考慮し,症状ネットワークモデルを用いて症状が改善した患者と非臨床サンプルの異同を明らかにした。この結果は国際誌に論文として報告した。結果的に,うつ病を経験した者特有の状態像を捉えることができたため,これを本課題における治療改善指標として利用できる可能性を得た。つづいて,健常者30例のニューロフィードバック実験を完了し,学会にて口頭発表を行った。申請した仮説の通り,ニューロフィードバックが標的領域に適切に作用していることを示した。このことから本課題においてニューロフィードバックを認知行動療法と組み合わせることが可能であることを示した。さらに,自然言語処理技術を用いて,実際の認知行動療法面接場面における治療プロセスを定量化した。この成果は国内誌に論文として報告した。これによって,認知行動療法がどのように作用しているかを症例レベルで可視化することができるようになり,これに基づき個別化された治療戦略を考えられる可能性を示した。
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