昨年度に引き続き、令和5年度はうつ病および他の精神疾患における脳病態モデルに関する研究成果を複数の国際誌(Molecular Psychiatryなど)に論文として公表した。また、本課題で得られた知見を集約し、臨床家が扱いやすい情報として社会還元すべく、神経科学知見を統合した治療モデルや情報提供モデルを開発した。これは本課題において、認知行動療法とニューロフィードバックといった異なる治療モダリティを脳作用ベースで連携することを提案・加速するべく、その根本となるアイディアとエビデンスを統合したものである。このモデルは、国際誌に投稿中のものを含め、国内誌への掲載および国内学会での口頭発表といった形で公表した。これは、本課題の最終年度としてその統合的な成果を公表したものである。一方で、昨年度の代表者の異動によって実施体制の継続が困難となり、介入研究は中断せざるを得なかった。研究手法等はすでに確立しているため、新たな研究資金を獲得後、これを再開させる見込みである。昨年度に着手した当該テーマにおける国内初の治療実践ガイドブックの翻訳は研究機関内に完了し、令和6年度6月に出版が決定している。 研究期間全体として、ニューロフィードバックおよび認知行動療法や精神疾患に関する脳画像研究の成果を多く国際誌上に報告できた。また、本課題を通して多数の共同研究を開始することができ、課題終了後も継続して発展的研究に取り組む体制を築くことができた。また、社会にこの成果を還元すべく研究論文としてのみならず広く公表の場を設定している。既述の通り、期間内に達成できなかった研究についても引き続き成果をまとめる予定である。
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