研究課題/領域番号 |
21K13736
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
橋本 和明 東邦大学, 医学部, 助教 (70792620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機能性めまい / 経験サンプリング / MUS / 心身医学 / PPPD |
研究実績の概要 |
めまいは臨床において頻度が高い症候の1つであるが、多くは心理社会的な要因が関連した心身症としての側面をもつ。しかし、機能性めまいの病態は未だ解明されておらず、約20%は原因が特定されないままmedically unexplained symptoms(MUS)として放置されている。本研究ではデジタルデバイスを用いて、機能性めまいに関連する心理社会的要因を日常生活下において精密に検証し、治療介入の糸口を探索することを目的としている。 当該年度においてはまず、横断データを用いて、MUSにおいて問題となる慢性疲労に着目し、めまいを含めた症候との関連性を検討した。MUSの症例120名が抽出され、自記式質問紙による病状評価を行い、回帰分析等による解析を実施した。その結果、MUSにおける疲労には抑うつなどの気分症状に加えて、めまいが影響する可能性が明らかになった。 上記の横断的検討と同時に、近年概念化され、機能性めまいの病態の多くが含意されると考えられているPersistent postural-perceptual dizziness (PPPD)の症例を対象に、心身医学的な見地から病状と行動の特徴を検討した。PPPDの症例では自我状態の特徴として、free childの低さやadapted childの高さが病状と関連し、一部の心身症とは異なる特徴もみられた。 そして、デジタルデバイスを用いた経験サンプリング法を実施するにあたり、システムの構築と試験運用を実施し、円滑に実施可能であることを確認した。 これらの調査結果をもとに、機能性めまいにおける日常生活下での情動とめまいの関連性を明らかにするため、経験サンプリング法による調査を開始した。次年度にむけて、対象者のリクルートを継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりも安価でパフォーマンスが高いシステムを導入したことで、ロスタイムが少なかった。また、スタッフによるシステムの試験運用を早期に実施したことで、円滑に調査へ導入することができた。そして、当初の予定通りに横断データの収集・解析を実施し、関連学術大会での発表やブラッシュアップを経ることで、最終産物である学術論文の作成に向けて基礎的な部分が着実に進展している。さらに、臨床症例ではデジタルデバイスに対する先入観的な拒否感や、操作方法への抵抗感に加えて、コロナ禍の影響もあり、リクルートが難しくなる可能性が考えられたため、初年度において前倒して開始したことで、進展状況は順調となった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を踏まえて、機能性めまいにおける日常生活下の情動と病状の関連について、デジタルデバイスを用いて調査する。具体的には10日間の参加期間において、日中のランダムな時刻に調査フォームを送信し、30分以内に対象者の現在の状態について回答してもらう経験サンプリング法を引き続き実施する。コロナ禍の影響を受け、リクルートに課題があることから、当初の予定よりも早い時期からのリクルートと謝礼額を調整することで、参加人数の確保に引き続き努めていく。また、当初予定していたシステムよりも効率的に調査を実施できる安価なアプリが開発されたため、アプリを活用することでより効率的に調査を遂行していく予定である。データの収集後はめまいに関連する情動についての解析を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、参加した学会の中に現地参加からオンラインによる参加に開催方法が変更になったものがあり、交通費等の支出が減少した。システムを変更したことにより、運用精度が改善されたために試験運用のコストが減少したことや、タブレット端末の購入台数を調整したことが繰り越しの生じた理由としてあげられる。次年度中にデータ解析に際して新たに必要となったソフトやPC周辺機材の購入および必要文献等の購入に使用する予定である。
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