研究課題/領域番号 |
21K13736
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
橋本 和明 東邦大学, 医学部, 助教 (70792620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機能性めまい / 経験サンプリング / MUS / 心身医学 / PPPD / 自律訓練法 / オンライン診療 |
研究実績の概要 |
機能性めまいは臨床的にも頻度が高いが、メカニズムが十分に解明されていないためmedically unexplained symptoms(MUS)として扱われやすい。Chalder Fatigue Scale(CFS)を用いて、MUSの疲労症状に影響する症候について重回帰分析を実施した。その結果、CFSに有意に関連する因子として、頭痛(β=0.14)、めまい(β=0.18)という身体症状ならびに、不安(β=0.35)、抑うつ(β=0.38)という精神症状が抽出された。また、睡眠薬の処方は負の有意な関連因子であった(β=-0.12)。上記の横断的検討により機能的なめまい症状の症候学的な側面の一端が明らかになった。さらに、機能性めまいの病態の多くが含意するPersistent postural-perceptual dizziness (PPPD)の症例について、IoTの時代に向けた心身医学的治療について検討した。PPPDでは自律訓練法が奏功する場合があり、心理社会的要因や自我状態などの特徴を考慮しながら導入を適切に見極めることが必要であり、オンライン診療を見据えた将来性が期待された。そして、機能性めまいにおける日常生活下での情動とめまいの関連について経験サンプリング法による実施した。当該年度ではパイロットスタディとして、11名の機能性めまい症例(男性2名、女性9名、平均年齢43.5歳)をリクルートし、データ数は323であった(回答率73.9%)。階層線形モデルを用いた検討を行ったところ、めまい症状に対して、レベル1の解析ではポジティブ感情は負の固定効果、ネガティブ感情は正の固定効果を認めた(p<0.01)。レベル2の解析では集団平均中心化したスコアのみが同様の効果を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに横断データによる調査を終了し、英文による原著論文を1本執筆した。同論文はすでに権威ある学会誌に投稿し、受理された。その他、研究で得られた知見等について、関連学術大会でのシンポジウムや口演により発表し、充実した成果を挙げることができた。経験サンプリング法を用いた調査に対するブラッシュアップも順調に実施できている。一方、臨床症例のリクルートは想定通りデジタルデバイスに対する先入観的な拒否感や、操作方法への抵抗感、コロナ禍による影響を受け、現時点での参加者は当初の予定よりも少ない。全体的な研究の進行自体は概ね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を踏まえて、機能性めまいにおける日常生活下の情動と病状の関連について、デジタルデバイスを用いた経験サンプリング法による調査を引き続き実施する。リクルート数に課題があることから、当初の予定よりもリクルート期間を延長する。データの収集後はめまいに関連する情動についての解析を実施していく。具体的には、併存症状を考慮しながら、階層線形モデルを用いた検討によって、情動が日常のめまい症状にどのように影響を及ぼすのか検討する。PPPDとそれ以外の機能性めまいの差異についても検討する予定である。また、その後の臨床的な転帰について検証するため、追跡可能な症例については追跡調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際情勢が悪化したため、当該年度に参加を予定していたロシアでの国際学会について参加を中止することになったため、出張費や交通費の支出が大幅に減少した。一方、円安の影響で国際誌での論文掲載費は大幅に上昇したため、その補填として使用した。また、コロナ禍の影響等でリクルート症例数が当初予定よりも少なかったため、クオカードの消費が減少したことが繰り越しの生じた理由としてあげられる。次年度中に新たにリクルートする症例に対するクオカード配布や経験サンプリングのシステム運用経費の延長に使用する予定である。
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