研究課題/領域番号 |
21K13738
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研究機関 | 広島文教大学 |
研究代表者 |
阿部 夏希 広島文教大学, 人間科学部, 講師 (90897612)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 過剰適応 / 評価懸念 / ランダムフォレスト法 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,抑うつなどの精神疾患に影響を及ぼすリスクファクターである過剰適応の早期発見,早期介入のための手段を確立することである。具体的には評価懸念尺度のうち過剰適応のスクリーニングに寄与する項目をIRTによって特定し効果検証することである。これまでの研究では,過剰適応者と非過剰適応者の弁別に重要な規定因が評価懸念(Fear of negative evaluation; FNE)であることを明らかにし,FNEを低減する介入が過剰適応の早期発見や抑止に有効である可能性を指摘した。 今年度は,この知見について頑健さを確認するために,すでに取得しているデータを用いてランダムフォレスト法による検討を行った。成人期以降の日本人1114名を対象とした場合と,思春期にあたる中学生・高校生312名を対象とした場合のいずれにおいても,過剰適応の分類で重要な変数はFNEであることが示された。幅広い年齢層を対象とした場合であっても同様の結果が確認されたことから,FNEが過剰適応の高群と低群の判別に最も寄与することに関して一般化可能性が示されたと言える。さらに,過剰適応のスクリーニングに寄与するのは,FNE尺度のなかでも順向項目群にある可能性が分析結果によって示唆された。 今後のデータ収集に向けては,関連研究者と議論を行い,データ収集,分析計画に関する示唆を得た。今年度の成果としてデータ収集までは至らなかったものの今後の研究を展開していくための具体的な方向性を得ることができたことから意義のあるものだったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ収集に関しては,当初予定していた計画よりも進捗に若干の遅れが生じた。これは,昨今,話題となっている心理学研究の再現性の問題に対処するために,データ収集に慎重を期したためである。新規データを収集する前にすでに取得済みのデータを用いて頑健性を確認した結果,遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後のデータ収集に向けては,関連研究者と議論を行いデータ収集,分析計画に関する示唆を得た。そのため,来年度行う研究1-1のデータ収集と分析に関しては十分な進捗が得られると考えている。しかし,研究1-2と研究2に関しては実験者と対象者が対面で半構造化面接を行う予定となっており,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から計画の変更が必要になる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
心理学研究の再現性の問題に対処するためにデータ収集に慎重を期し2021年度に計画していた調査や分析を2022年度に実施することとした。そのため,当初2021年度に支出する予定であったオンライン調査費用などを2022年度にスライドし,その結果として次年度使用額が生じた。研究1-2と研究2に関しては対面による半構造化面接を行う計画であり,新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては計画の変更が必要になる可能性があるものの,現時点で全体的な計画に大きな変更はない。
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