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2023 年度 実施状況報告書

過剰適応者の早期発見に向けたチェックリストの開発と介入プログラムへの展開

研究課題

研究課題/領域番号 21K13738
研究機関広島文教大学

研究代表者

阿部 夏希  広島文教大学, 人間科学部, 准教授 (90897612)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード過剰適応 / 評価懸念 / IRT
研究実績の概要

本研究の目的は,抑うつなどの精神疾患に影響を及ぼすリスクファクターである過剰適応の早期発見,早期介入のための手段を確立することである。具体的には評価懸念尺度のうち過剰適応のスクリーニングに寄与する項目をItem Response Theory(以下,IRTとする)によって特定し効果検証することである。
今年度は過剰適応を測定する尺度に関する問題点をふまえて,石津 (2006)の青年期前期過剰適応尺度ではなく,風間・平石 (2018)の関係特定性過剰適応尺度(以下,OAS-RSとする)を使用して調査を行い,過剰適応の概念について考察した。既存の過剰適応尺度の問題点としては,過剰適応者の状況や,対人関係を通じての首尾一貫した行動パターンは測定できているものの,個人が周囲のそれぞれの他者と間でどのような過剰適応状態にあるのかという日常場面での実際的な姿を把握するのが難しいことが指摘されている。この点を考慮しOAS-RSを用いて調査を行った。調査対象者は,中学生313名とその親313名,大学生477名とその親477名である。過剰適応とは,第三者から見て優れた環境適応をしており,不適応的な側面に関しては他者から気づかれていないことが過剰適応者の前提となっている。この前提のもと,過剰適応型において自己抑制の自己評価の得点が他者評価よりも有意に高くなることを予測とした。分散分析の結果,中学生・大学生ともに過剰適応群の自己抑制の自己評価の得点が親からの評価よりも有意に高かった。他者志向性についても同様の結果が得られた。このことから,OAS-RSによる測定では保護者は過剰適応群の自己抑制を過小評価していると考えられる。今後は適切な尺度を用いて過剰適応のスクリーニングに寄与する項目をIRTによって特定する必要があるだろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

質問紙によるデータ収集は終えているものの,当初予定していた研究計画のうち対面の面接ができなかったため,全体の研究計画の進捗がやや遅れている状況である。

今後の研究の推進方策

研究1のデータ収集と分析に関しては十分な進捗が得られると考えている。しかし,研究2の半構造化面接に関しては研究者と対象者が対面で面接を行う必要があり,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から実施が不可能となった。今後のデータ収集に向けては,所属先と協議のうえ対象者にとって不利益が生じないように調整する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初2021年度に支出する予定であったオンラインでの質問紙調査費用を2022年度にスライドしその結果として次年度使用額が生じた。これに加え,研究2は対面による半構造化面接を行う計画をたてていたものの,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から所属先で対面による面接を行うことが困難になり当初の研究計画を変更する必要が生じた。これによって年度内の完了が困難になった。
今後は研究計画の一部を変更し,対面による半構造化面接ではなく,過剰適応の概念的妥当性,信頼性について検討する質問紙調査を行う予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 過剰適応概念の検討と再考―過剰適応の子どもは親からどのように見られているのか―2024

    • 著者名/発表者名
      今田奈緒・阿部夏希・中島健一郎
    • 雑誌名

      広島大学心理学研究

      巻: 23 ページ: 46-59

  • [学会発表] 縦断調査による大学生の孤独リスクに関わる要因の検討(1)―孤独感に着目した個人要因と集団(大学)要因の影響―2023

    • 著者名/発表者名
      李 受珉・戸谷彰宏・清水陽香・安部主晃・重松 潤・張 清源・神原広平・阿部夏希・早瀬 良・杉浦仁美・阿部修士・中井隆介・柳澤邦昭・中島健一郎
    • 学会等名
      日本心理学会第87回大会
  • [学会発表] 縦断調査による大学生の孤独リスクに関わる要因の検討(2)―孤立指標に着目した個人要因と集団(大学)要因の影響―2023

    • 著者名/発表者名
      戸谷彰宏・李 受珉・清水陽香・安部主晃・重松 潤・張 清源・神原広平・阿部夏希・早瀬 良・杉浦仁美・阿部修士・中井隆介・柳澤邦昭・中島健一郎
    • 学会等名
      日本心理学会第87回大会
  • [学会発表] DAGsで作成したモデルは将来の青年の孤独感を予測するか?2023

    • 著者名/発表者名
      神原広平・戸谷彰宏・李 受珉・清水陽香・安部主晃・重松 潤・張 清源・阿部夏希・早瀬 良・杉浦仁美・阿部修士・中井隆介・柳澤邦昭・中島健一郎
    • 学会等名
      日本心理学会第87回大会
  • [学会発表] 過剰適応概念の検討と再考2023

    • 著者名/発表者名
      今田奈緒・阿部夏希・西村由貴子・中島健一郎
    • 学会等名
      日本心理学会第87回大会
  • [学会発表] 孤独感を予測する要因の検討2023

    • 著者名/発表者名
      阿部夏希・中井隆介・戸谷彰宏・李 受珉・清水陽香・神原広平・安部主晃・重松 潤・張 清源・早瀬 良・杉浦仁美・阿部修士・中井隆介・柳澤邦昭・中島健一郎
    • 学会等名
      日本心理学会第87回大会

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公開日: 2024-12-25  

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