研究課題/領域番号 |
21K13739
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研究機関 | 聖カタリナ大学 |
研究代表者 |
田村 優佳 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 准教授 (70627463)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 吉本内観法 / 認知活動 / メタ認知能力 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、犯罪(非行)少年に対する集中内観法(吉本内観法)の効果について、主に心理検査(ロールシャッハ・テスト、PFスタディ等)を通して考査した。内観法による変容のプロセスが先行研究、研究者によって様々述べられているが、成人を対象としていることが多かった。そのため、犯罪(非行)少年の認知側面の変容にはとても成人のようには至らない事例があった。認知、情緒、社会性等に軽微な遅れや偏りが見受けられる少年も含まれており、犯罪(非行)少年の事例検討を通して、未成熟の段階からの発達心理学的な視点について考察することが重要と考えた。 事例検討の結果、成人と犯罪(非行)少年の認知面の違いはあるが、家族関係(対人関係)の体験記憶を通して他者と自己のグッドイメージ(肯定的な内的作業モデル)を得て自己肯定感が高まるという点では高い共通性があると考えられた。また、成人ほど積極的とまでは言えないが、犯罪(非行)少年の内観へのモチベーションが認められた。その結果、内観法は非行や犯罪など問題行動に焦点を当てた手法ではない(内観3項目:していただいたこと、迷惑をかけたこと、して返したこと)にも関わらず、「自問自答」するプロセスを経て、犯罪被害者やその家族の立場になって相手の心情に思いを至らせる等、犯罪(非行)少年自らプロブレムフォーカスする契機になっていた。次年度は、認知能力を中心に、集中内観後の自己理解、他者理解の深まりとの関連について論考したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
思考、記憶等の認知活動全般についてのメタ認知能力が定着し、もうひとりの自分(観察自己)が内在化されるというのは、児童、少年の発達最終段階と言える。本研究は事例検討が中心ではあるが、感覚、情緒、社会性、そして認知活動の領域で効果検証できる事例が集積された。
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今後の研究の推進方策 |
成人の認知活動では統合期の特性が変容の初期段階とされていることが多いが、本研究の対象は少年であるため、認知活動の特性(未分化→分化→統合)や未分化(未成熟)な段階についての質的変容を示していきたいと考える。また、表情認知など対人関係を調整するうえで重要な認知能力をロールシャッハテストを使って評価、検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は感染症対策としてオンライン会議へ変更することとなり、研究環境が変化した。そのため、研究計画上予定していた旅費や事例検討に関する謝金、物品費の未使用分は次年度に使用する予定としている。
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