脳磁気刺激(TMS)は、ヒトの認知機能の中核である脳リズムを非侵襲に操作することで、関連する認知・行動を変容できる可能性のある手法である。マインドフルネス訓練は、近年注目される心理的介入技法の一つで、継続的な訓練によって、メタ認知機能を促進し、ネガティブな考えにとらわれる反芻思考に対する気づきや、思考に対する反応性の低下を促進するとされる。本研究は、TMSとマインドフルネス訓練を組み合わせることで、反芻思考を低減させる介入プログラムを開発することを目標としている。 今年度は、前年度より検討した介入プログラムの効果を検証するために、非臨床群を対象として研究参加者ごとの脳リズムをもとにパーソナライズされた反復TMS(rTMS)とマインドフルネスをベースとした訓練プログラム(MT)を用いた実験を実施した。その結果、反芻思考とメタ認知機能に関連する注意課題のパフォーマンスにおいて、TMSとMTの相乗効果が示唆された。さらに、得られた成果について、国際学会にてポスター発表を行った。 マインドフルネス訓練は、メタ認知機能の向上に関して持続的な効果を示すが、そのような効果が出るまでに時間がかかることが課題になる。一方で、TMSは即効性があるものの、効果の持続が課題となる。本研究によって、両者を組み合わせた介入技法が、それぞれの長所を活かしたより効果的な介入となる可能性を示せた。また、本研究を通して、TMSの作用メカニズムにおける脳リズムの重要性を明らかにすることができたこと、さらにTMSをはじめとした非侵襲的脳刺激の手法と心理的介入技法との組合せ介入の可能性を示せたことは大きな成果である。
|