研究課題/領域番号 |
21K13748
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
角谷 基文 専修大学, 文学研究科, 特別研究員 (10802796)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 社会的動機付け / 予測誤差 / 計算論的精神医学 |
研究実績の概要 |
本研究では、計算論行動科学、脳機能イメージング、大規模オンライン実験の手法を用いて、自閉スペクトラム症(ASD)者における社会的報酬が社会的関わりへのモチベーションへと転化されるメカニズムの解明を目指します。本研究では「自分の行動に対する他者の反応に伴い生じる予測誤差が、他者との関わりへのモチベーションに関与しており、ASD者ではそのメカニズムに欠如がある」との仮説を立てました。この仮説を検討するため、他者と関わり合いを行う心理実験を実施し、他者の反応に伴う予測誤差が発生する確率の異なる複数の他者への選好性を検討しました。この実験を通して、以下の2点を検討しています。1)予測誤差の大きさ(驚き)が行動の結果の価値を下げているのか、2)他者への選好性(社会的関わりへのモチベーションへと転化)にこのメカニズムは関与しているのか。結果、驚きが行動の結果の価値(嬉しさ)を下げていることが示されました。この点は、これまでほとんど実験で示されてきておらず、新たな知見となります。一方で、驚きが行動選択に与える影響までは検討できておらず、今後、新たな実験系を構築して検討していく必要があります。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で新たな心理実験の実施が制限されていたので、既存のデータを用いて、社会的関わりへのモチベーション及び他者との関わりに関する研究をシミュレーション解析及び脳機能画像解析を現在実施しています。今後は、これらの成果をもとにしたオンライン実験を実施するとともに、新型コロナウイルスの影響を注視しながら新たな心理実験も実施していきます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究を通して、申請者の仮説通り、予測誤差の大きさ(驚き)が行動の結果の価値を下げていることが示されました。しかし、新型コロナウイルスの影響で追加の心理実験及び脳機能イメージング実験を実施することができませんでした。コロナ禍でも研究を進めるため、現在は、他者との関わりに関する既存の研究のデータに、計算論行動科学の手法を用いて以下の2点を検討しています:1)集団の中でゲームを行う相手を選ぶ時に、「驚き」は影響するのかをシミュレーションで検討、2)複数の他者の選択が自身の選択へ影響する際の脳機能メカニズムの検討。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本申請計画の基盤である「ASD者における社会的報酬が社会的関わりへのモチベーションへと転化されるメカニズム」について、新たな実験系を考案して検討していきます。さらに、現在実施している社会的関わりへのモチベーション及び他者との関わりに関する研究もシミュレーション解析及び脳機能画像解析のみで止めることなく、大規模オンライン実験を実施し、さらに詳細に追求していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で実施可能な実験に制限が生じたため
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