研究実績の概要 |
本研究課題は,音楽により誘発される感動と内受容感覚の関係を検討するものである。最初に行動実験により,感動の特性の個人差と内受容感覚の個人差の関係を明らかにする。内受容感覚は感情の制御や感情把握に影響すると考えられていることから,内受容感覚の高い人は音楽ごとの感動の変化に敏感に反応すると考えられる。また,身体的情動に基づく感動であるため,ゾクゾク感などの身体感覚と関りがあると予想される。音楽ごとの特色や時間的変化を解析することで,内受容感覚の高低と関りのある特徴量を抽出することを目指す。そこから,内受容感覚から感動が知覚されるモデルを検証する。 研究目的を達成するため,心拍知覚に基づいて内受容感覚感度の個人差を計測する手法を検討した。ここ1,2年の間に内受容感覚感度を測定する方法が複数提案されており,それらの調査・比較をした。さらに,心拍弁別課題について従来手法を改善した方法を開発し,その妥当性の検討を行った。新手法を用いることで心拍知覚に対する複数の感覚(感度・精度)を同時に測定することが可能となった。また,測定した内受容感覚と質問紙の得点との関連がみられ,測定手法の妥当性が示された。次に,感情刺激を用いた実験について,近年提唱されている内受容感覚と感情のモデルについての調査を行った。それに基づいて音楽聴取時の生理反応計測を行った。さらに,内受容感覚感度の個人差が脳活動に与える影響について検討した。
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