研究課題/領域番号 |
21K13754
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
寺岡 諒 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 特別研究員(SPD・PD・RPD) (10896666)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 聴覚的注意 / 聴覚心理学 / 聴覚情景分析 / 注意 / カクテルパーティ効果 |
研究実績の概要 |
日常生活では,音像(事象)が静止し続けることは少なく,また聴取者の頭部や身体も動いていることが多く,聴取者と音像との位置関係は動的に刻一刻と変化する。従来の研究では,音像の相対的な位置関係が固定された状態での注意効果を検討したものが多く,音像の位置や音圧が動的に変化する状況下での注意の効果やその様相については検討がなされていない。そこで本研究では,聴取環境が動的に変化する状況下での聴覚的注意効果やその様相を明らかにする。 この目的を達成するためには,聴取者自身の動きによる影響(自己受容感覚情報による影響)と聴取環境の動的な変化による影響(耳入力信号の動的変化による影響)を切り分ける必要がある。よって本研究では,【A】聴取環境のみが動的に変化する状況下での聴覚的注意効果やその様相の解明,【B】聴取事態のみが変化する状況下での注意効果と様相ついてそれぞれ検討を行う。 【A】に関しては,昨年度から継続的に行っている,奥行きに対する聴覚的注意効果の検討を行った。実験では,聴取者の奥行き方向に並べられた複数のラウドスピーカ設置し,標的音と競合音を連続呈示した。距離における標的音の呈示確率を統制することで,参加者の注意を統制した。参加者には,注意を向けた位置によらず,標的音が呈示されたら素早く反応するよう教示した。実験の結果,標的音の呈示距離と注意を向けた距離が離れるに従って誤警報率(競合音を標的音と誤判断してしまう割合)増加することが示された。 また,動的に変化する対する反応についても同様に研究を行った。具体的には,自身に接近する音に対する反応と注意機能との関連性について検討を行った。実験では,参加者に向かって同じ等速で接近する音刺激を呈示し,その際の注意効果を計測した。実験の結果,より身体の近傍で刺激が接近した場合,遠方で接近した場合に比べて注意の影響が大きいことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中に【B】聴取事態のみが変化する状況下での注意効果に関する研究を行う予定であったが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響などにより,計画が後ろ倒しになり,予備実験にとどまっている。よって,総合的にはやや遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するためには,聴取者自身の動きによる影響(自己受容感覚情報による影響)と聴取環境の動的な変化による影響(耳入力信号の動的変化による影響)を切り分ける必要がある。よって本研究では,【A】聴取環境のみが動的に変化する状況下での聴覚的注意効果やその様相の解明,【B】聴取事態のみが変化する状況下での注意効果と様相の解明の2つから構成される。 【A】に関しては,昨年度得られた知見を踏まえ,移動音像に対する聴覚的注意の空間的・時間的特性を明らかにする。 【B】に関しては,特に頭部や身体の運動中の聴覚的注意効果とその特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験がやや遅れている点が挙げられる。本年度は,前年度未使用額も含め,実験機材の調達,実験の実施,成果発表等に有効に利用し,高い成果を目指す。
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