研究実績の概要 |
最終年度である2023年度は次の研究を行った。■昨年度に得た結果である次数付フィルトレーションの構成を応用することで、節減数が3の整閉イデアルのとき、そのイデアルの第0次, 第1次, 第2次ヒルベルト係数の間に不等式が成り立つことを示した。■与えられたネーター局所環において、トレースイデアルが有限個となる条件について考察した。まず、局所環の整閉包が局所環であるとき、トレースイデアルが有限個であれば環の次元が1以下となることを示した。その上で、1次元ネーター局所環においてトレースイデアルが有限個となるための必要条件および十分条件について、それぞれ特別な場合について考察した。■ホモロジカル予想に関する有名な予想の一つに、Auslander-Reiten予想がある。Auslander-Reiten予想が成り立つとき、環がARC条件を満たすという。このとき、ARC条件を満たす環を正則列のなすイデアルの冪で変形した環も再びARC条件を満たすことを示した。更にその結果を用いて、剰余環が完全交叉となるウルリッヒイデアルが存在すればアウスランダー・ライテン予想が成り立つことを示した。■イデアルのヒルベルト関数に関する不変量の一つに、sectional generaがある。この論文ではsectional generaを用いて環のCohen-Macaulay性およびquasi-Buchsbaum性を特徴づけた。 期間全体を通じて、ヒルベルト関数、トレースイデアルの二つのテーマを中心に成果を挙げることができた。特に、ヒルベルト関数の研究においては、ブルバキ完全列の一般化となる加群のフィルトレーションを構成したことが進展の鍵となった。
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