研究実績の概要 |
昨年度に引き続き, 松澤陽介氏との射影空間の超曲面上の有理点の弱近似条件付きの分布についての共同研究を行った. 超曲面上の弱近似条件を満たす有理点の個数関数について, first momentの評価がおおよそ完成したため, プレプリントを執筆中である. また, 関連して, 与えられた弱近似条件を満たす点を含み, 指定した大きさのsuccessive minimaを持つ格子の個数評価について, 前年度まではrank 2までしか計算していなかったものを, 一般のrankで計算し, 不等式の形を整理することができつつある. さらに, 与えられた弱近似条件を満たす有理点を持つ超曲面の数え上げに関する漸近式, 弱近似条件について一定の範囲で一様かつ, 誤差項を定量的な形で保持しつつ得た. これはPoonen--Volochによる選考結果の(誤差項の)定量化と言え, 同じく執筆中のプレプリント中に整理している. First momentに引き続き, 同問題のsecond momentの計算の準備も始めた. 特に, le Boudec--Browning--Sawinの導入したd_2(x,y)という量(指定した有理点のペアを持つ超曲面の数え上げに現れる格子の最大successive minimaの評価に必要である)の分布の評価に弱近似条件を与えた場合の考察をし, le Boudec--Browning--Sawinの結果を再現しつつ弱近似条件の効果を予言するheuristicsを得た. また, 新しいテーマとして, 等差数列中の最小概素数の研究を始めた. まだ詳細な計算を行っていないが, Li--Zhang--Caiの選考結果にGreavesの重み付き篩を導入するというアイデアを得た.
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今後の研究の推進方策 |
First momentの結果についてプレプリントをできる限り完成させる. また, second momentの評価に使う分散法に必要な補題を用意し, second momentの評価を行う. さらに, second momentで用いたManin予想の主要項の近似を平均的にEuler因子に分解する. 等差数列中の最小概素数問題については, まずGreavesの重み付き篩について先行研究の調査を深める.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在行っている射影空間の超曲面上の有理点の研究の整理が不完全なため, 今年度は研究とその整理に注力し, 次年度以降の研究発表の旅費に集中して助成金を使おうと計画し, 次年度使用額が生じた. このため, 次年度では研究の整理がつき次第, 主に国内外での研究発表のための旅費として使用する予定である.
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