研究実績の概要 |
今年度は, 与えられた数列の互いに素な項の組の数え上げに関して, 数列が平方数程度に疎な場合に古典的な方法が持つ誤差項評価における困難さを解決するためのある種の平均法を開発した. 応用として, [x/n]型数列(齋藤耕太氏, 武田渉氏, 吉田裕哉氏との共同研究), 回文数(小林弘京氏, 梅澤瞭太氏との共同研究), Piatetski-Shapiro数列(自身の単著)の場合に新しい結果を得て, プレプリントとして発表した. 特に回文数の結果はBanks--Shparlinskiが2005年に提出した問題を解決するものである. また, [x/n]型数列についてはWu--Yuによる等差数列中の分布に関する結果をhyperbola methodの亜種で改善し, Titchmarsh divisor problemの"multiplicativeな"類似物を考察し, 予想を提出した. [x/n]型数列の結果においては自身の2022年度までの研究課題であった「数論における指数和の応用の新展開」における知見を活かすことができた. また, Lille第1大学のGautami Bhowmik氏と素数の位取り記数表示を左右逆に読んだ"reversed prime"の分布について研究を始めた. 特にreversed primeに対するDirichletの算術級数定理やSiegel--Walfiszの定理の類似を底が十分大きい場合に証明できた. また, 底と考える等差数列の間に特殊な関係がない場合は, reversed primeにはSiegel零点の影響がないことが明らかになった. また, 立谷洋平氏と金子元氏と疎なべき級数の無理数性に関するErdosの手法の研究を開始した. Erdosの平均的考察によるトリックと金子元氏も用いていた位取り記数法の繰り上がりに由来するisland--oceanの技法を組み合わせて無理数性の判定法や数論的級数の無理数性が新しく得られそうである.
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次年度使用額が生じた理由 |
この次年度使用額は, 本研究の最初の2年間は研究の整理に注力したため, 助成金の使用がほぼできなかったことに由来する. 今年度は順調にこれら2年度分の研究費を使用し, 次年度使用額を1年度分にまで減らすことができているため, 使用状況は正常であると思われる. 研究の進捗を勘案しつつ, 次年度も引き続き積極的に国内外に共同研究のために出張を積極的に行い, 計画的に研究費を使用する予定である.
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