研究課題/領域番号 |
21K13780
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
菊田 康平 中央大学, 理工学部, 助教 (10880073)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | K3曲面 / 導来圏 / 自己同値群 / spherical twist / 自由群 / 中心群 |
研究実績の概要 |
今年度は写像類群の重要な元であるDehn捻りに関する基本的事実をもとに,自己同値群の球面捻りの群論的性質を明らかにした.まず射の空間の次元の総和を交点数と定義し,球面捻りの反復作用における交点数の振る舞いを評価する基本不等式を示した.これは次数付き微分圏の理論を駆使することで示される.この基本不等式を用いることで,(1) 自己同値関手と球面捻りの可換性と,その自己同値で球面対象が固定されることの同値性や,(2) 交点数2以上の2つの球面捻りが生成する部分群は自由群となることを示した.以上2つの定理は,主張はもちろん証明のアプローチも写像類群の場合と酷似しており,単なる類似を超えた深い関係を示唆するものである.また応用として,K3曲面の自己同値群の中心群を計算した.証明は,Hodge構造に関する議論や,安定性条件の空間への作用を考察することで得られる.導来圏とは異なる文脈で古くから研究されている超越的自己同型群が自然に現れるのも面白い点である.以上をプレプリントにまとめ,投稿した. さらにFederico Barbacovi氏と上記の基本不等式の改良に取り組んだ.次年度のreviseに反映させる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書に記載した,「ping-pong補題を用いた自由群の埋め込みの構成」と「K3曲面の自己同値群の中心群の計算」が納得のいく形で理解することができ,プレプリントにまとめることができたから.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きK3曲面の自己同値群の群論的性質を研究する.具体的には,ピカール数1の場合の有限生成元集合の特定,有限部分群の安定性条件の空間への作用,コホモロジーに自明に作用する部分群のtorsion-free性などである.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の継続により,国内および海外の出張を辞退せざるを得なかったため.
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