研究課題/領域番号 |
21K13782
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
長峰 孝典 小山工業高等専門学校, 一般科, 助教 (10882516)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | UFD / 次数付環 / 消去問題 / アフィン代数多様体 / 局所冪零導分 |
研究実績の概要 |
本研究ではアフィン代数多様体における消去問題に取り組んでいる。特に、消去問題を考える際に重要なアフィン代数多様体の座標環はUFD (一意分解整域) となるため、本年度はUFDに着目し研究を行った。本年度当初の目標は「体上有限個の関係式で定義される (可換) 環がUFDであることを示すための条件を構成すること」であった。これについては論文出版に至る結果を得ることができた。結果の概要は以下の通りである。 [結果の概要] 1964年にサミュエルが与えたUFD判定 (与えられた環がUFDであることを示すための条件) が適応できる環は限られており、本研究に利用するには不十分であった。そこで我々はサミュエルによる判定方法を一般化し、新しい判定方法を構成した。特に環AがUFDであるとき、以下の環がUFDとなるための条件を与えた。 (i) A[x]/(ax-b) (ii) A[x]/(x^n-F) で次数付環の構造をもつ これらがサミュエルの判定方法の一般化となっている。我々はさらに4種類の判定方法を与え、あわせて6種類のUFD判定を構成した。それらの応用として以下の4つを行った。 1) 次元3のネーター的UFD構成とその生成元の最小個数の決定、2) 次元3のネーター的ではないUFDの構成、3) 3項式で定義されるUFDの構成、4) ブルバキの演習問題の反例の構成。 特に、1) で現れるUFDは、4変数多項式環上のある局所冪零導分の核として現れる環に一致する。その生成元の最小個数を決定したことで、任意の個数の元で生成される核を持つ局所冪零導分の存在が明らかになった。3) の3項式で定義されるUFDは、複雑性が1であるトーラスの作用を持つアフィン代数多様体の座標環となっており、幾何学的にも意味があるものである。4) で構成した例は次元4のネーター的ではないUFDである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は「体上有限個の関係式で定義される (可換) 環がUFDであることを示すための条件を構成すること」であり、論文出版に至る結果を得ることができた。そのため今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究でUFD判定方法が構成できたので、来年度以降は以下のように研究を進める。 (1) 体上有限生成なUFDに対して、その生成元と関係式を含め分類する。(2) 分類されたUFDについて、消去問題の仮定を満たす族を決定する。(3) 分類されたUFDについて、消去問題の肯定解を表す不変量 (予備研究で得られたもの) を計算する。(4) 消去問題が肯定的となるアフィン代数多様体の族を構成する。 (1) については本年度出版論文の共著者であるDaniel Daigle氏およびGene Freudenburg氏と連携して研究を遂行する。特に次数構造を持つ2次元UFDの場合は、論文出版には至っていないものの分類は完成しており、この手法の高次元化を目指して研究を遂行する。(2)、(3)、(4) については、まずは現在得られている2次元の場合に限定して研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染症のため、予定していた国内・外の会合がオンラインで実施された。そのため、旅費の支出分がなくなり次年度使用額が生じた。
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