研究課題/領域番号 |
21K13791
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久野 恵理香 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (50822871)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 写像類群 / 曲線グラフ / 向き付け不可能曲面 / マーキング複体 / 歪み度関数 |
研究実績の概要 |
本研究は,写像類群を幾何学的群論の立場から解明することを主軸に,主に群と写像類群の間に擬等長写像あるいは擬等長埋め込みがあるかを判定することを目標としている.2023年度は,本研究課題と関連し,向き付け不可能曲面の写像類群と擬等長的となる距離空間を構成することを目指し,片山拓弥氏と議論を重ねることができた.写像類群と擬等長的となる群や空間は写像類群を幾何学的群論の立場から調査する際に重要な役割を果たす可能性がある.向き付け可能曲面に対して,Masur--Minskyがマーキング複体を定義した.マーキング複体は写像類群と擬等長的であることがわかっている.マーキング複体を参考に向き付け不可能曲面に対して写像類群と擬等長的な複体を構成することを大きな目標として定めた.Papadopoulos--Pennerが向き付け不可能曲面に対してパンツ複体の定義を与えていると言える.このパンツ複体のアイディアを用いて向き付け不可能曲面のマーキング複体あるいはその類似物を構成することができるのかを考えるという1つの方針を立てた. また,Johnsonフィルトレーションの間の歪み度関数を決定する研究の解決に向けて大森源城氏と議論を行うことができた.Broaddus--Farb--Putmanが向き付け可能曲面に対してトレリ群の写像類群における歪み度関数を求めている.主にBroaddus--Farb--Putmanの歪み度関数を求めるアイディアをもとに考察した. 更に,写像類群の部分群でbalanced superelliptic写像類群と呼ばれるものに着目し,balanced superelliptic写像類群から写像類群への単射準同型が擬等長埋め込みであるかという問題について大森源城氏と片山拓弥氏と議論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
向き付け不可能曲面の写像類群と擬等長的となる空間を構成することを目指すという,研究計画を立てた際には想定していなかった方向へと研究を展開させることができた.本研究達成のために今後考察すべき問題も見出すことができた.Johnsonフィルトレーションの間の歪み度関数を決定する研究の解決に向けて研究を継続できた.また,写像類群や曲線グラフに関する理解を深めることもできた.以上の状況を踏まえると,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の,向き付け不可能曲面に対してマーキング複体あるいはその類似物を構成する研究を継続する.Johnsonフィルトレーションの間の歪み度関数を決定する研究も引き続き行っていく.また,写像類群に関連したさまざまな群に着目して幾何学的群論の立場から考察していきたい.対面での研究打合せを定期的に行って,研究を進めたり知見を広げたりしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は当初の計画より物品費を抑えて研究活動を行うことができた.次年度に研究打ち合わせ等旅費に使用する予定である.
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