研究課題/領域番号 |
21K13801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池 祐一 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (50850400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超局所層理論 / 位相的データ解析 / パーシステンス加群 / 層量子化 |
研究実績の概要 |
シンプレクティック幾何学においてハミルトン微分同相写像による分離エネルギーの評価は現在も重要な問題であり,主にFloer理論的なアプローチで研究されている.私はこの問題に対して超局所層理論を用いた異なるアプローチで研究している. 位相的データ解析の重要な道具の一つであるパーシステンス加群間にはインターリービング距離という自然な距離が定まり,この距離は層理論によっても解釈される.私は浅野氏との共同研究において,層の圏におけるインターリービング的距離が,層のハミルトン変形によってホッファー距離以下の変化しか起こさないことを示した.この結果により余接束のシンプレクティック幾何学における分離エネルギーの評価が超局所層理論で可能になった. 今年度は浅野氏と共同で上記のインターリービング的距離の完備性を証明し,連続なシンプレクティック幾何学との関係について研究した.完備性とホッファー距離に関する安定性を組み合わせることにより,ホッファー距離に関する完備化の元に対して層を対応させることができる.特に,ハミルトン微分同相写像のある意味での連続極限であるハミルトン同相写像に対して層を対応させて,連続なシンプレクティック幾何学を超局所層理論で扱えるようになった.完備性に加えて層理論におけるLSカテゴリーの理論も整備し,ハミルトン同相写像に関するアーノルド型の定理の純層理論的な証明を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層の圏のインターリービング的距離の完備性が得られたことにより,特異対象の層量子化が行えるようになったことは大きな進展である.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き特異ラグランジアンの層量子化をインターリービング的距離の完備性から調べる.またコボルディズム距離を層理論から解釈する研究も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で旅費への支出がなく,計画を大幅に変更して使用した.旅費に利用する予定だった助成金で専門書を購入し研究に役立てた.次年度は専門書または出張に使用する予定である.
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