研究課題/領域番号 |
21K13808
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
渋川 元樹 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (60737740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 特殊函数 / 対称函数 / 可積分系 / 調和解析 / 表現論 / 特殊値 |
研究実績の概要 |
令和4年度は主に次の4つの研究を行った:1) Zwegers の \mu 函数のq-差分方程式的観点からの一般化 (土見怜史(神戸大学)との共同研究)、2) 二変数の対称函数の特殊値をの単調性や漸近性についての解析 (後藤良彰(小樽商科大学)との共同研究)、3) 円分多項式の x=1 周りの Taylor 展開の係数についての研究 (松坂俊輝(九州大学)との共同研究)、4) Ruijsenaars 型恒等式とその応用 (野海正俊(立教大学)との共同研究)。 このうち元来の研究計画と直接関係するのは 2)、3)、4)であるが、1) も我々が導入した一般化された \mu 函数が、Askey-Wilson 多項式 (一変数 Koornwinder 多項式) の最も退化した continuous q-Hermite 多項式の次数パラメータに関する連続変形 (``continuous q-Hermite 函数'') であることが判明したので、本研究との関連が明らかになった。 2) は令和3年度に引き続き対称函数の特殊値の研究であるが、最終的に初期値一般の二階線型常差分方程式の解についてのいくつかの単調性の同値条件を完全に決定するに至った。 3) も対称函数とその特殊値の応用として始めた研究であり、最近提示された秋山-金子による整除性に関する予想を、解決した。 4) は、令和3年度に引き続き、Pieri 型公式や作用素の可換性を一般的に論じる上で不可欠である source identity に関する研究である。特に A 型の差分作用素の可換性を一般的に論じるために Ruijsenaars 型方程式を考察し、その解としていくつかの Ruijsenaars 型恒等式を導出した。更にこの Ruijsenaars 型恒等式 を、いくつかの補間多項式(函数)の Tableau 和公式へ応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、令和3年度に引き続き、一般化された \mu 函数に関連した一変数特殊函数の研究や、対称函数の特殊値についての研究を行った。両者とも当初予定していた一応の「決着」を見るところまで漕ぎつけ、現在までに得られた成果をまとめた論文を共同研究者と共に準備中の段階である。また今後の展望も拓けているので今後も研究を継続する。 更に全く予期していなかった円分多項式についての秋山-金子予想の解決にも成功し、こちらは既に共同研究者と論文を執筆し、学術誌に投稿済みである。 対称函数の基本公式そのものに関しては、特に A 型の差分作用素の可換性を一般的に論じ、そのような可換作用素族を構成するために、Ruijsenaars 型方程式を導入した。更にその Ruijsenaars 型方程式の解 (Ruijsenaars 型恒等式) をいくつか構成し、それを補間多項式(函数)の Tableau 和公式を証明する際の key lemma であることも発見した。これらの結果に関しては現在論文を準備中である。 以上のように、一定の成果、思いがけない展開等があり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、特に令和5年度の研究に関しては、前年度の多様な課題の研究を継続しながらも、対称函数の基本公式そのものについての研究も精力的に推進したい。
とりわけ令和4年度に大きく研究が進展した Ruijsenaars 型恒等式についての研究を進めたい。特に令和4年度は A 型の Ruijsenaars 型恒等式を重点的に考えたので、今年度は BC 型の Ruijsenaars 型恒等式の研究を行う。また以前から研究している多変数 Meixner 多項式の高階差分作用素についてはこの BC 型の Ruijsenaars 型恒等式の典型例になっているので、互いに関連させながら研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に折からの新型コロナウイルスの世界的パンデミックに伴う研究集会の中止や出張制限が令和4年度も継続していたことにより、計画通りの予算執行を行えなかった。令和5年度はこの次年度使用額は特に、本課題と関連する研究集会での講演者の謝礼や旅費の援助等といった用途での使用を計画している。
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