研究課題/領域番号 |
21K13814
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高橋 悠樹 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70897769)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Quasiperiodic cocycle / Lyapunov exponent |
研究実績の概要 |
準結晶の数学的構造に関する問題を研究した。準結晶とはその名の通り「結晶ではないが結晶に近い性質を持つ物質」のことである。すなわち、「原子の並び方に一定の規則性が存在するものの、周期性が存在しない物質」のことである。準結晶は1984年に Dan Schechtman により発見された。その業績により、Dan Schechtman は2011年にノーベル化学賞を受賞した。 準結晶のモデルの中でも、一次元の quasiperiodic なモデル、それもシュレーディンガー方程式のポテンシャルが monotonic かつ unbounded な場合についての研究を行った。このとき、対応するシュレーディンガー方程式の Laypunov exponent が analytic であることを証明した。Quasiperiodc なシュレーディンガー方程式を考えるとき、行列の無限積の問題が自然に現れる。Lyapunov exponent とは、この行列の無限積が「どの程度の速さで大きくなるか」という量である。 Lyapunov exponent は quasiperiodic なシュレーディンガー方程式の解析において極めて重要な役割を果たす。シュレーディンガー方程式の多くの情報は、Lyapunov exponent と密接に関係している。よって、今回の結果は、unbounded なポテンシャルを持つ quasiperiodic なシュレーディンガー方程式の解析に役立つのではないかと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね期待通りの結果を得ている。1パラメータに依存する Furstenberg measure の絶対連続性は、当初の予想よりだいぶ難しい問題であることが分かってきたので、今は関連する問題を研究している。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、1パラメータに依存する Furstenberg measure の絶対連続性は、当初の予想よりだいぶ難しい問題であることが分かってきた。よって、絶対連続性を示すのではなく、現在は以下のような問いを主に研究している: 1パラメーターに依存する行列のランダム積を考えたとき、パラメーター領域に bifurcation current と呼ばれる測度が自然に定義される。この bifurcation current がどのような測度かに興味を持っている。これについては、すでにある程度の結果も得られている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナワクチン非接種のため、海外への出張が不可能となったため。その分は国内出張や研究者の招聘などに充てる予定。
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