研究課題/領域番号 |
21K13814
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高橋 悠樹 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70897769)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | Lyapunov exponent / random matrix products / uniform hyperbolicity |
研究実績の概要 |
行列式が1の2×2行列が有限個与えられたとする(この組を F とかく)。このとき、これらの行列をランダムに掛け合わせることを考える。このとき、この積がどの程度のスピードで増加するかを測る量として、Lyapunov exponent と呼ばれるものが知られている。たとえば、F が x 軸方向に 2 倍、y 軸方向に 1/2 倍するような行列のみからなる場合、 対応する Lyapunov exponent は log 2 となる。また、F が回転行列のみからなる場合には、Lyapunov exponent は 0 となる。 行列の組 F が uniform hyperbolic であるとは、F から任意に n 個の行列を選び掛け合わせたとき、その積が exponential に増加することをいう。F が uniformly hyperbolic であるときには、F はある種の「安定性」を持つことが知られている。 2022年度には、1パラメーターに依存する行列の組に関する問題を考察した。このとき、Lyapunov exponent は subharmoic な関数になる。行列の組がパラメーターに関し monotonic であるとき、行列の組が uniformly hyperbolic であることと、Lyapunov exponent が harmonic であることが同値であることを示した。また、Thouless formula と呼ばれる、Lyapunov exponent と rotation number に関する関係式についても考察し、これの拡張を与えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1パラメーターに依存する Furstenberg measure の絶対連続性の問題は、2021 の "Invariant measures for Iterated Function Systems with inverses" の論文で部分的に解決している。この論文で与えた例の transversality condition を示すことができれば、事実上の解決となる(この問題は学生に与えることを考えている)。現在は、非常に関連性の深い別の問題について考察している。
|
今後の研究の推進方策 |
興味があるのは、もとの行列の組が symmetric である場合であるが、おそらくこれは非常に難しい問題であると考えている。これからは、行列の組が inverse を持つ場合に、この組がある種の安定性をもつことと uniformly hyperblic であることが同値である、という定理の拡張を考えたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナワクチン非接種のため海外渡航が困難であり、そのため次年度使用額が生じた。水際対策がようやく撤廃されたため、今年度は、その分を海外出張に使用する予定である。
|