研究課題/領域番号 |
21K13819
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
村田 美帆 静岡大学, 工学部, 准教授 (90754888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ネマティック液晶 / Navier-Stokes方程式 / 時間大域解 / 最大正則性 |
研究実績の概要 |
Beris-Edwards (1994) によって定式化されたネマティック液晶の流れを表すモデルを3次元以上の全空間で考察した.このモデルは,非圧縮性粘性流体の運動を表すNavier-Stokes方程式と, Qテンソルと呼ばれる液晶分子の配向を表すテンソルに対する放物型方程式の連立系で表される. 今年度は十分小さな初期値に対し時間Lp, 空間Lqの最大正則性が成り立つクラスで時間大域解の一意存在性と解の減衰評価を得ることができた. 本研究と同様に,全空間で強解の一意存在性を得た先行研究として,Xiao(2017)とSchonbek-Shibata(2019)がある.Xiaoは方程式中に現れるパラメータ(せん断流が液晶分子の配向方向を回転させる効果と静止させる効果の比率を表す)が0であると仮定した簡易的なモデルを扱っている.またSchonbek-ShibataはQテンソルの高階微分を含む項を除いたモデルを扱っているためBeris-Edwardsが提唱したモデルとは異なる.一方,本研究ではパラメータに対し条件を仮定せずに,Beris-Edwardsのモデルに対する結果を得ることができた. また非線形問題を解く上で鍵となる,線形化問題に対する最大正則性評価と半群に対する減衰評価も本研究で得られた結果である.本研究で用いた,線形化問題に対する2つの評価を組み合わせて時間大域的適切性を得る手法は,非有界領域で放物型方程式や双曲・放物型の連立方程式を解くための統一的な手法として期待されている.本研究のようなテンソルを含む複雑な様相の方程式に対しても適用可能であることが立証された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標はネマティック液晶の流れを表すモデルの可解性と解の挙動を数学的に考察することである.今年度は,Beris-Edwardsによるモデルに対し,全空間においてこの目標を達成し,論文として出版することができた.
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今後の研究の推進方策 |
ネマティック液晶に関する数学モデルは大きく分けて2つ知られており,Ericksen-LeslieによるモデルとBeris-Edwardsによるモデルがある.今後はこの2つのモデルに対し可解性と解の挙動を考察する. Beris-Edwardsのモデルについては,半空間で時間大域的適切性を得ることを目標に,線形化問題の解析を行う.まず,レゾルベント問題の解表示をもとにR-有界性を示し,最大正則性を導出する.次に半群に対する減衰評価を考察する. Ericksen-Leslieのモデルについては,温度に依存するモデルの可解性につなげるため,まずは温度に依存しない圧縮性のモデルに対し全空間で時間大域的適切性を考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で出張ができず,研究打ち合わせや研究成果発表はほぼオンラインで行われたため次年度使用額が生じた.差額は書籍購入や論文投稿に充てる予定である.
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