研究実績の概要 |
数学解析において, ネマティック液晶の分子の運動を表す方程式は大きく2つに分類される. 分子の形状に対称性がある場合は1軸性として分類され, 分子の流れを表すベクトルと長軸方向を表すベクトルを未知関数とする方程式で記述される.これを以下, Ericksen-Leslie modelと呼ぶ. 一方で, 分子を直方体とみなす場合等は2軸性として分類され, 分子の配向方向を表す未知関数はテンソルとなる.これを以下,Beris-Edwards model (Q-tensor model)と呼ぶ. 今年度は以下の2つの問題を考察した. 1. 全空間における圧縮性Ericksen-Leslie model 方程式をLagrange変換し, 線形化すると, 圧縮性Navier-Stokes方程式に対する線形化方程式と熱方程式の連立系となることから, 2つの方程式に対する最大正則性評価と半群の減衰評価を用いてBanachの不動点定理から十分小さな初期値に対し, 時間大域解の一意存在性を得ることができた. 2. 半空間におけるBeris-Edwards model 有界領域や外部領域を含む一般領域で方程式の適切性を得るためには,全空間と半空間における解析が重要である.昨年度は全空間における時間大域的適切性(cf. Murata and Shibata(2022))を得ることができたので, 次のステップとして半空間で考察を行った. まず部分Fourier変換によってレゾルベント問題の解表示を求め,解作用素のR-有界性を示した.次に,線形化問題の解に対する最大正則性評価を導出し,この評価を用いて十分小さな初期値に対する時間局所解の一意存在性を示すことができた.
|